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本編
9歳の私の中に突然流れ込んできた様々な知識が、前世の記憶だと理解したのは、3日寝込んで起き上がった時でした。
そして気がついた最悪の展開。この世界、漫画の中の世界じゃないかしら?
しかも、私は事あるごとに主人公の邪魔をするライバル令嬢。ものすっごく性格悪くて、私も大嫌いだったあの、シャンタル・バスティアじゃないかしら……?
頭を抱えたのは、当然の事だと思います。
私はひとまず状況を整理するために日記を開き、自分が覚えている漫画の中の出来事と、この世界に生きていて知った出来事を書き記していきました。
すると、なんと言うことでしょう。
私、主人公の邪魔をせざるを得ないことが発覚したのです。
主人公の邪魔をした私の行き先は身分剥奪の上、国外追放。泣く泣くそのための準備をしようと覚悟しました。処刑エンドじゃなくて良かった。
それから私は、いずれ婚約を破棄される同い年の王太子との仲を改善したり、義弟や使用人との仲を改善したり、両親の仲を取り持ったり、ダイエットに励んだり、たくさんの努力をしました。
努力はしましたけれども、漫画のストーリーが変更されるとは思えません。
だって主人公と王太子との恋愛は本当に純粋なものなのです。お互いがお互いを、ただ好きなだけ。大好きで大好きで一緒にいたいだけなのです。
だから前世の私は主人公が好きだったし、ライバルのシャンタルが大嫌いでした。
本当に素直でがんばり屋で、かわいくってふわふわで。
それなのに、シャンタルときたら出会うたびに「みすぼらしい」「汚ならしい」「穢らわしい」に始まり「王太子に似合わない」「仕草に品がない」「地に這いつくばっているのがお似合い」などと罵倒しながら見下すのです。
そのたび主人公ちゃんは「シャンタル様の言う通り……だけど、好きなんだもん! あきらめられないよ」と頑張るのよ。それが健気で愛らしくて、可愛い! がんばれ! と応援しちゃうのです。
やがて支援してくれる伯爵に出会い、学園に通いながらどんどん知識を吸収し、淑女らしくなっていく主人公ちゃん。それをさらに激しく虐めるシャンタル。
きゃー、憎たらしい! 時々虐めるのに失敗して、あれこれとドジを踏むのがスッとするのよね。ええ、私ですけれども!
けれども、彼女の正体を知る私としては、現実的には応援できない立場になってしまいました……。
決して、彼女を王太子の正妃にはできません。
対峙するための準備も平行しつつ、私は王太子妃教育に勤しむのでした……。
そして、初対面の日。
12歳になった私と王太子殿下の前に、それは現れました。
その日は王太子殿下とその側近たちと一緒に、王城の近くの森で森林浴を楽しんでいたのです。
小さな池のそばで、ずぶ濡れになって倒れている少女が発見されました。騎士見習いの少年が抱き起こすと、彼女はゆっくりと目を覚まします。
わずかにピンクがかった茶色い髪は、乾いた部分だけがふわふわと風に揺れています。小顔にぱっちりとしたつぶらな瞳がうるうると揺れて庇護欲を掻き立てるよう。アヒル口というのか、口角が上がって口先がやや突き出したような形状の唇をしていて、その上にちょこんと添えられるように小さな鼻があります。
首は細くなで肩で、そっと包み込んであげたいような雰囲気をした愛くるしい少女。彼女こそが、漫画『ソフィーの秘めごと』の主人公、ソフィー・ルートルです。
やがてバレーヌ伯爵に引き取られ、ソフィー・ルートル・バレーヌとなる少女は、王太子と見つめ合いました。
「君は……」
王太子がそう声を発したとたん、少女はまた気を失いました。
さぁ、ここが最初のルート分岐。ひと目で恋に落ちた王太子は、彼女を王城に運ばせるわけですが、もちろんシャンタルは反対するわけです。
曰く、「そんなみすぼらしい平民の女を王城に入れるなんて!」とのこと。
……いやー、確かに身元不明の人間をすんなり王城に入れるのは問題があります。けれども、言い方ってあるでしょう?
そこで私は王城の中に連れていこうとする王太子殿下を引き止め、こう進言しました。
「王城外壁の治療所に連れていき、必要ならば使用人用の部屋を開けさせましょう。見たところ平民の少女のようですが、迷子でしょうか? 王城の中では緊張して休めないかもしれませんわ。その上で、保護者を探してあげましょう」
気の毒そうにいたわるように少女を見れば、殿下は逡巡しているようですが、側近たちはすぐに同意して動き始めてくれました。それを見て、王太子殿下も頷きます。
――殿下は、漫画のストーリー通りに彼女に一目惚れしたようですね。その目が熱くなっているのがわかります。
ですが殿下、申し訳ありません。その恋は報われることがありませんのよ。
私は、治療所まで少女に付き添うと言って断られ、代わりに殿下を王城に送る役目を仰せつかりました。
こうして、主人公との邂逅は無事にすんだのです。
もちろん、その後が無事だったわけではありません。王太子殿下はその少女の見舞いに行くと言って、外壁の治療所に何度も行こうとなさいました。
そのたび、治療所の迷惑になりかねないからと言い、日程を組んで王城の治療所慰安の意味での訪問という形を作り、けして少女と二人きりにはしないよう配慮することを警備の者と確認しました。
それでも王城外壁近くの池で、二人きりになったようですがね。本当に原作の強制力と言うものがあるのか。恐ろしいものです。
ふたりは淡い恋心を育てているようです。12歳の少年少女の恋なんて、微笑ましくて好いですが、その後に起こることと、ついでに婚約者のいる王族という立場を考えれば、大変に不味いです。
しかし、直接王太子殿下ご本人に忠告するのは悪手というもの。私は、こっそり周囲に相談しながら、王太子が心配であるという態度を貫きました。相手の身分だとか、可愛らしい少女だとかは置いておいて、ただ王太子の立場と状況を心配しているという体で。
これは王や王妃だとか、王族に仕える臣下だとかにウケて、かなり親身にしていただけました。「恋は盲目と申しますし、一時的なものならそれでよし。将来的にもというならきちんと体裁さえ整えてさえもらえば、愛妾でも側室でもしていただいてよいのですよ」と涙を流せば、王妃様にはきつく抱き止めてもらえました。
これで、もし漫画のストーリー通りに進んでも、あんまりひどい扱いはされないと思うのですよ。
国外追放される途中で、盗賊に襲われて終わりとか嫌ですからね。せめて国境までは警備していただきたい。
しかしなんというか。ダイエット頑張って良かったです。
漫画の中のシャンタル・バスティアは9歳の時点から大変に貫禄のある姿をしておりまして、いえ、自分のことですから言い替えます。けっこうなおデブさんでありまして、ヒロインのソフィーにかけられる罵声にも、私はよく「お前がなw」というツッコミを入れていました。
ダイエットしていなければ、王妃の腕の中には入りきれなかったでしょう。大臣からの「これほど儚く美しい女性を置いて、別の女性の元に行くとは」という憤慨の言葉も得られなかったでしょう。とても頑張ったかいがあったというものです。
私は、大人たちに頼りながら、15歳から通う学園に思いを馳せました。
15歳になりました。
明日から、学園に通います。
ソフィーは無事にバレーヌ伯爵の養女になったようです。彼は王太子派の人間で、子供好きと知られる人物ですの。たくさんの孤児院を経営していることから、初めは孤児院に入れたはずだったのが、なぜか学園に通わせたいから養子にしてやってほしいと王太子殿下が要請したらしいんですの。王は苦い顔をしていらっしゃいました。
これは、あの許可が降りるかもしれません。
私は期待に胸踊らせながら、学園へ向かう馬車に乗りました。
学園は15歳から18歳になるまで王族貴族の子が通い、共に様々なことを学びながら親睦を深める場所です。
一部以外の伯爵と子爵以下の低位の貴族は8歳から初等部に通いはじめています。12~15歳は中等部となりますか。その後、この間だけが高位貴族と関わる機会になりますので、子爵以下の貴族にとっては勝負の時といった所です。
シャンタルのバスティア家は侯爵ですので、もちろん高位貴族です。人をみる力が試されますね。
バレーヌ伯爵家は、そこまで強い力があるかと言えば微妙です。人徳はあるようですが、それほど影響力のある方とは思えません。だからこそ、養父に選ばれたとも言えますが。
さてさて、学園に着きました。
出迎えは……居ませんね。仕方ありません、王太子殿下はソフィーに夢中なのです。侍従の手を借りて馬車を降りると教室に向かいます。
すると、中庭でピンクの髪を囲うご令嬢たちを見かけました。まさかと思いますが、少し近づいてみましょう。
「貴女のような平民上がりが、王太子殿下に馴れ馴れしくするなんて」
「そうよ、ご迷惑だと思わないの?」
「そんな……私」
なんだか思った通りだけれど、思ったよりは大分軽い、『注意』程度のことを言われているソフィーさんが、悲しそうに俯いています。スルーしても大丈夫そうですが、変にヒートアップして怪我人が出ても困りますね。さらに近付き声をかけます。
「もし、皆さま時間に遅れますよ」
「……ッ、シャンタル様!」
「ぁっ、シャンタル様……」
ご令嬢たちは一斉に私に対して礼をとり、ソフィーさんはホッとした顔をしました。一応、お見舞いに行ったり、孤児院に訪問に行ったりしましたから、知り合い以上お友だち未満みたいな感じなのです。ソフィーさんは、仲良しのお友だちだと思っていそうですが。
「ソフィーさん、教室は分かりますか?」
「それが……迷ってしまって」
「そうですか。では一緒に行きましょう。クラス名は分かりますね?」
「はい! マルグリットです!」
「私はガルデニアですし、殿下はロジエですし、離れてしまいましたね……」
「そうなんですか……残念です」
「では、皆さまも遅れませんよう。お先に失礼いたしますわ」
「「はい、シャンタル様、ごきげんよう……」」
揉めていたのを曖昧にしつつ退散です。元凶が居なければ続きもできませんしね。
そして軽く雑談しながら教室に向かっていると、途中で王太子殿下に出くわしました。
「ソフィー! シャンタル」
「エディ様!」
エディっていうのは殿下の愛称ですね。キラキラの笑顔で駆け寄るソフィーさんを見送り、私は黙って礼をとります。
「ソフィー、遅いから心配してた」
「ごめんなさい、迷っちゃったの。そしたらシャンタル様が助けてくれたのよ」
「そうか。シャンタル、ありがとう」
「いいえ、殿下」
行こう、とソフィーさんの腰に手を当てる殿下は幸せそうです。周りの側近たちに目をやれば、肩をすくめられてしまいました。相変わらずのようですね。
私はこのまま、付かず離れずで行くことにしましょう。
「シャンタル、君との婚約を破棄してくれ。俺はソフィーと結婚したい」
18歳。ついにこの時が来ました。
場所は王城の一室で、殿下と私、ソフィーさんと殿下の側近たちがいます。
椅子に座ってお茶を一口いただいた後の、第一声がそれで、私は覚悟していたはずなのに一瞬固まってしまいました。
「ごめんなさい、シャンタル様。私、エディのことが大好きで諦められないんです」
はらはらと涙を流すソフィーさん。ええ、知っていますよ。あなたたち二人の愛は純粋だった。たくさんの人の嫌味の中、けしてくじけず努力し、認められてきましたね。それもこれも、王太子殿下のため。全ては殿下と共に歩むため。
だけど、ごめんなさい。阻止させてくださいませ。
「すまない、シャンタル。お前なら認めて……」
「ジュスト様。申し訳ありませんが、例のものをお持ちくださいませ」
殿下の側近の一人であるジュスト様に願うと、恭しく頭を垂れて退出していきました。
殿下とソフィーさんは、何が起こるのかと挙動不審になっています。
やがてジュスト様は、いくつかの箱を持って戻ってきました。
「殿下。ソフィーさん。こちらは王に願ってお貸しいただいた、国宝の魔道具でございます」
その箱たちを示しながら言うと、ふたりは困惑したような表情をしました。
しかし、私が最初の魔道具を取り出し、その紹介をすると、ソフィーさんはあからさまに顔をこわばらせます。
「こちらは『真実の鏡』と申しまして、写ったものの本当の姿を写します」
「……!!」
顔色を変えたソフィーさんを心配しながら、殿下は先を促します。私はまず私を写して異常がないか見せてみました。……お化粧前の姿が写るのが、とても恥ずかしいです。厚化粧でないことだけは証明できました。
次に殿下を写し、側近たちも順々に写します。彼らは化粧もしていないので、そのままですね。
そして最後に。
ソフィーさんを写しました。
「……! なんだこれは……!!」
殿下は顔色を失いました。
そこに写っていたのは、可憐な少女よりずっとずっと小さい、
一匹の、カワウソでした。
そう。漫画『ソフィーの秘めごと』は、王子さまに恋したカワウソの少女の物語なのです。
私は前世で漫画が完結しハッピーエンドを迎えた時、ソフィーと王太子はそれからいつまでも幸せに暮らしただろうと、そう思っていました。
けれども、その世界が現実になって、こう思ったのです。
この世界でも、カワウソと恋愛とか結婚とか、無理でしょ、と。
念のため、私は調べました。人化した動物と、人が一緒になって幸せになれるのか。すると、現実はもっと酷いものでした。出てくるのは人化した動物にひどい目に遭わされる物語ばかり。もちろん創作でしょうが、それでもこの世界には動物と幸せになるお話がひとつも無かったのです。
異種婚姻譚がない世界。
愕然とした私は、ある国宝の魔道具の存在を知りました。
それが、ここにあります。
「殿下、ここに『ステータスボード』の一種と言われる魔道具がございます。これには様々な種類がございまして、こちらは指定した人間の状態異常を調べることができます」
「状態異常……」
なんともゲーム的なこの魔道具は、アーティファクトと言われる失われた技術で作られた貴重な魔道具です。これまで何度も、毒に侵された王族を救ってきたものだそうで、本当に特別にお貸しいただけました。
「これで、ソフィーさんを調べます」
「……ッッ」
すると、『人化の呪い』という状態異常があると出ました。さらにこの魔道具の凄いところは、その異常がどんなものかを調べることができる所なのです。
「この『人化の呪い』をさらに調べると……」
「こんな……まさか」
そこに書かれていたのは、こんな説明でした。
――――――――――――――――――――――――――――――
『人化の呪い』
動物や魔獣を、強制的に人の姿にする呪い。
意中の相手と交わると、相手の魂を対価に永遠に美しい人の姿で居続けることができる。
元の姿が他人にバレると、30分後に解除されて二度と呪いを受け付けなくなる。
―――――――――――――――――――――――――――――
「魂を……これは、まさかッ」
王太子殿下は、ソフィーの肩を掴みました。……憤怒の表情で。
「お前……貴様、騙していたのか! 自分が美しい人の姿でいるために、この俺の魂を狙っていたのか!」
「えっ……エディ様、何のことですか?!」
「この、しらばっくれる気か!!」
ソフィーさんの胸ぐらを掴みとった涙声の殿下を、慌てて止めます。あなた、数刻前までに彼女に向けていたとろけるような眼差しはどこへ行ったんですか?
「殿下! 殿下、お離しください! ソフィーさんは、あなた様を騙していた訳ではありません!」
私の言葉にピタリと動きを止める殿下。その指を、丁寧にソフィーさんから外していきます。
「ソフィーさん、これが貴女にかけられた術の正体です」
「……ッ、な、んですか、これ」
差し出した『ステータスボード』に浮かぶ情報に困惑し、青褪めるソフィーさん。その様子を見ていた殿下も冷静さを取り戻したようです。本来聡明な方なんですよ、本来なら。
「こんなの……こんなの知りません! 大好きな人と結ばれたら、その人と永遠に幸せになれるんじゃないんですか?」
悲痛な表情のまま、私を見上げるように伺うソフィーさんの体は小刻みに震えています。彼女の涙の溢れる目を覗き込んでも、嘘は見えませんでした。様子を見ていた王太子殿下も、落ち着いたのか憐れそうに彼女を見ます。
私はそんな彼女に、残酷な現実を突きつけなくてはなりませんでした。
「ごめんなさい……私、あなたたち二人が幸せに暮らす方法をずっと探していたのですけれど、どうしても見つけられなかったの。けれど、彼の魂をあなたにあげることはできないわ。彼はこの国に必要だから」
きっぱりという私の顔を、ソフィーさんはじっと見ています。まるで一言も洩らさないとばかりに。
「あなたと私たちでは寿命が違うわ。だから、もしかしたら婚約を破棄される前に、その、二人が結ばれるのじゃないかと恐れてはいたのだけど、ちゃんと人間の事情を汲んでくれたのでしょう?」
「エディが……正式に結婚するまではダメだって……」
「ええ、王太子殿下の妃は結婚するまでは、ね」
もし王太子でなければ、その限りではないので、制度に救われましたね。王太子殿下が気まずそうですが、いえ立派なものです。
私は二人の顔を見て、さらに残酷な提案を振ることを決めました。
「ソフィーさん、提案があるの。殿下のことが大好きで大好きでたまらないあなたならできるだろう提案が……」
ふたりは、その提案にとても意外そうな顔をするのでした。
あのあと、ソフィーさんはカワウソの姿に戻りました。茶色にわずかなピンクが入った毛並みは、すべらかで確かに彼女なのだと確信させます。
そんな彼女は今、王太子殿下の肩に乗っています。
あのあと私がした提案は、カワウソの姿のまま、殿下の癒しとして彼のそばに侍ることでした。つまり、殿下のペットになることです。
ふたりは意外な提案だったのか目を丸くしましたが、ソフィーさんはカワウソの姿に戻ったらもう側にはいられないと思っていたらしく、大喜びで受け入れてくれ、殿下もその様子を見て受け入れました。
こちらの世界では、カワウソは水の精霊に通ずると言われており、殿下が連れて歩くこと自体には問題がなかったのも幸いしました。
今も、どうしても危険な場所でない限り連れていくほど仲睦まじく、カワウソでも付けられるアクセサリーをよく贈っていらっしゃいます。
さて、私はというと。
実は王太子妃になりました。
殿下からしても、カワウソのソフィーさんのことを知る私が側にいるのは安心するらしく、さらには全く何の非もない私との婚約をなくすことはできなかったという事情もあり、そのまま婚約は継続、学園を卒業して一年後結婚しました。
まぁ、私は意中の人もいませんでしたし、婚約破棄も国外追放も平民落ちも処刑もないなら、万々歳です。
ソフィーさんは、やっぱり私を仲のいいお友だちだと思っていたらしく、殿下の肩からよく私の胸にも移ってきます。すべらかな絹のような手触りは、撫でているととても癒されます。いつまでも撫でていたいような、不思議な魅力がありますね。
にこにこしながら撫でていると、殿下に嫉妬されるのが不満な程度でしょうか。今もソフィーさんはとてもレディーとは思えない姿で寝そべっていますが。リラックスできているようで、良かったです。ソフィーさんとしても、ドレス姿よりこちらの方が落ち着くのかもしれませんね。
案外、これはこれで幸せな結末だったかもしれません。
ただ、前世で異種婚姻譚が好きだった身としては、ちょっと悲しいだけで……。
そんなことを考えつつ、殿下の肩を見れば、とても幸せそうな顔で眠るピンクのカワウソがいるのでした。
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