文学賞に挑戦するまでの話

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文学賞に挑戦するまでの話

自己紹介したとおり、 私産婦人科医だったんです。 ……今でも、ですけど。 現在、個人病院の院長をやっております。 さて、産婦人科という職業ですが…… 自分でも言うのもなんですけど、相当ハイパーなブラック業界でした。 時間が読めない出産対応、緊急手術に終わらない外来、 さらに当時は、結構大きな大学病院勤務だったので、 仕事以外の仕事も果てしなくある。 まさに目が回る忙しさ。 さらに、産婦人科って、医療の中でも物凄い特殊性があります。 新しい命が誕生したと思ったら、 同じ日に子宮頸がんで亡くなる人もいる。 命の始まりと終わりが、同じフロアに集約されているのです。 その状況に心が混乱するのですが、 混乱する暇も許さないくらい、忙しさに忙殺されます。 改めて文章化すると、中々なカオスですね。 さらに産婦人科といえば、当直が恐ろしく多いので、 医者からも敬遠されるような職業。 月半分くらいの当直をこなす日々が、十年以上続きました。 あの頃はアパートに住んでたけど、 自分のアパートでまともに寝ることができるのって、 月の3分の1くらいだったから、 相対的に家賃3倍くらい払ってない? そんな世の中の不条理に、 悶々たる日々を過ごしておりました。 なんだか、 産婦人科のブラックっぷりだけで、本が一冊書けそうです。 このままだと、 話が逸れて、逸れて いつまで経っても、小説の話に戻れなさそうです。 さて、 そんな、異常とも言えるような当直をこなす中で、 私にも趣味がありました。 文章を書くことです。
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