視点のはなし

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視点のはなし

小説を書くうえで、たぶん全員がぶち当たる壁。 視点。 ざっくり言うと、 その物語が誰の目によって描かれているのかってこと。 言葉にすると簡単なんだけど、 気にしはじめると、永遠に気になるやつ。 「視点がちゃんと出来ていないと、 文学賞で相当評価が下がるぞ!」 「いや、そんな事ない!  いい話であれば、多少の視点のブレは 評価に影響しない!」 そんな論争が、日々ネットで活発に議論されています。 あくまで個人的な考えなのですが、 デビューを目指すなら、 視点を敢えて乱した作品でチャレンジするよりは、 基本はできてますよって、 堅実にアピールした方が 絶対に良いと思う。 デビューした後 担当さんとやりとりしながら、 本当に実感したことがあります。 編集者さん達は、 視点のブレについて、 滅茶苦茶厳しいぞってこと。 さらに、これは後々説明しますが、 いずれの文学賞でも、 選考を通過していく過程で、 編集者さん自身が選考します。 ということはつまり、 視点に厳しい人たちが、 賞の判定をするわけです。 (正確には、最終選考に残すかどうかを判定する) 編集者さん達は、 毎日プロ作家さん達の原稿に目を通し、 さらにその合間に新人賞の選考もしている。 そんな中、 視点を乱して勝負するというのは、 単純に考えると、 リスクばかりが大きい方法です。 実際、 デビュー決定後の担当さんは、 まるで精密機械のように 視点のブレを指摘してきます。 「視点には一定のルールがあるが、 その実、書き方は自由だ! 見よ、有名作家の〇〇さんは、 視点の縛りを越えた名作を書いてるし、 過去の偉大な文豪たちは 神視点で有名作を書いてらっしゃる!」 そんな意見もネット掲示板では散見されるのですが、 有名作家さん達は 視点の基礎をマスターした上で あえて自分の世界を広げているのです。 逆にいうと、 有名作家さんの独自性は 地位を確立したからこその 特権でもあるのかもしれない。 新人作家未満なのだから、 型通り攻めた方が 余程、良いと思われます……。 無意識に 視点がぶれやすい癖が あるかもしれないし それだったら、早く直した方がいい。 でもね、 一旦、基本に立ち返って 根本的な事を考えてみる。 『そもそも、なんの為に 視点を整えなきゃいけないの?』 そもそも論ってやつですね。 議論が平行線になった時って、 そもそも論に立ち返ると、 恐ろしくシンプルな答えで 解決しちゃったりします。 視点を整えるとは……、 『読者さんが 読みやすいようにするため』 なんですよね。 視点ってのは、 評価を得るための技術 ではなくて、 その先の、読者さんが楽しめるための技術 なわけです。 編集者さんだって、 選考で落とすために視点のブレを チェックしているのではなく、 その先の読者を想像して、 読みやすさを整えているのです。 だったら、 自分の意地を通すよりも 視点を一回勉強しておいた方が 自分に対しても 読者さんに対しても 得に決まっております。 自分のため そして 未来の読者さんのため……。 レッツ、視点統一! ですね。 あっ、 そうそう。 視点の勉強する時の、 超個人的なアドバイスですが、 有名作家さん達の本を 沢山読んで勉強するのは、 やめた方が良いかもしれないです。 上述の如く、 プロ作家さん達は、 視点の基礎を持っていながら、 自分なりの解釈や工夫で、 独自の視点の世界を 展開していたりします。 だから、 いろんな作家さん達の自由な文章を目にしていると、 「どんな書き方がオッケーなのか?」 「一体、視点とはなんぞや?」 だんだん混乱してしまいがちです。 (特に女性作家さん達の方が、自由かもしれない……) 実際私も一時期、 『視点マジで意味わからねえ!』 の沼にハマりました。 結局私は、 デビューするまで あまり多くの本は 読まないようにしようと心に決めました。 集中して読んだのは、 2−3人だったかな。 他は、新人賞作家さんの デビュー作ばかり読みました。 デビューしたばかりの作家さんの方が 基礎的な視点運用をしてらっしゃる方が多い それになにより、 受賞作品のレベルを 知りたかったから。 視点の勉強するなら、 新人作家さんの方が、 絶対的にお勧めです。 さて、 そんなややこしい視点ですが、 自分なりの理解の仕方を紹介します。
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