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その日は、4月にしては珍しいほど湿度が高く寝苦しい夜だった。
紫藤アキもまた、一人で眠れぬ夜を過ごしていた。
もっとも彼女が眠れない理由は湿度のせいだけではないのだが・・・
枕元のスマホを手に取りカバーを開くと、ディスプレイの照明がスポットライトの様にアキの白い顔を照らした。
「もう2時・・・か」
ため息のように声を漏らすと、スマホを枕元に戻して布団に潜り込み、ぼんやりと天井を眺めた。
「明日も学校なのに、早く寝なきゃ・・・え?」
視界の端に妙な違和感を感じ、ふと視線を送ると、そこにはアキと同じ学校の制服を着た女が立っていた。
「!?」
慌てて起き上がろうとして、初めて自身の体の異変に気が付いた。手足どころか指1本すら動かせなくなっていた。
「ア・・・ウ」
どうやら声も出せないようだ。
かろうじて目だけは動かせたので、恐る恐る女の方を見たのだが、その瞬間、アキの全身に鳥肌がたった。
女子高生の姿をしたソレは、確実に生きてはいないモノである事を、アキは直感で理解したのだ。
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