0人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
そしてソレは、ノソリノソリとアキに近づき、遂にはアキの顔を覗き込めるほど、側までやってきた。
普通の娘ならとっくに失神しているだろうが、この異様なモノの正体を見極めたいという欲求が、今にも途切れそうなアキの意識をかろうじて繋いでいた。
しかし女の顔を見た途端、恐怖は噴き出したさらなる疑問に抑え込まれた。
「ナ・・・ギ?」
そう。
女の正体は、10日前に学校の屋上から飛び降り自殺したアキの親友、葛葉ナギだった。
彼女の自殺は全く突然の出来事であり、その理由は未だに闇の中だ。
そしてそれはアキが眠れぬ夜を過ごしてきた理由でもある。
どうして・・・どうして?どうして!
聞きたい事が次から次へと湧き出て頭の中をぐるぐると駆け巡ったが、今のアキは唸ることしか出来なかった。
そんなアキに反応したのか、それまでマネキンのように、ただただ固まっていたナギが血の涙を流しながら、ゆっくりと彼女の両肩に手をのばした。
パタリパタリと赤く冷たい雫がアキの頬に落ちる。
「ナギ・・・」
その一言を最後にアキの意識は急激に薄れていった。
最初のコメントを投稿しよう!