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魂とは、情報の坩堝。個人のその心、記憶、人格、人生を形成する全てである。
人類の医療と電子技術の発達は、肉体のどこに魂があるかを突き止めるに至り、そしてそのとき人類が選んだのは肉体からの脱却だった。肉体があるからこそ、飢え、病み、衰え、死ぬのだと当時の人々は考えた。魂一つあれば、個人という存在は保たれる。ならば重く苦しいだけの肉体は捨ればいい。
肉体から抽出された魂は、その情報丸ごとネットワーク上のサーバーに移植され、現実世界から人類の姿は消え失せた。電脳空間こそが、人類の新天地。
ここでは飢えも衰えもなく、遮るものすらない世界では見たいもの、やりたいもの、なりたかった自分、その全てが叶う。
肉体なき魂には死すらない。人類は新たなステージに乗り上げたのだ。
――実に千年前の話である。
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