オンラインデスゲーム

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 魂とは、情報の坩堝。個人のその心、記憶、人格、人生を形成する全てである。  人類の医療と電子技術の発達は、肉体のどこに魂があるかを突き止めるに至り、そしてそのとき人類が選んだのは肉体からの脱却だった。肉体があるからこそ、飢え、病み、衰え、死ぬのだと当時の人々は考えた。魂一つあれば、個人という存在は保たれる。ならば重く苦しいだけの肉体は捨ればいい。  肉体から抽出された魂は、その情報丸ごとネットワーク上のサーバーに移植され、現実世界から人類の姿は消え失せた。電脳空間こそが、人類の新天地。 ここでは飢えも衰えもなく、遮るものすらない世界では見たいもの、やりたいもの、なりたかった自分、その全てが叶う。  肉体なき魂には死すらない。人類は新たなステージに乗り上げたのだ。  ――実に千年前の話である。    
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加