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はじめに
どこから言えばいいだろうか。
うちの職場にはとても変わったおじさんがいる。
その人のことを僕は例のあの人と呼んでいるのだが、それには理由があるからだ。
いつも僕が話しかけると、例のあの人は僕と話すときだけ急に態度を変える。
どういう風に変わっているかって?
そうだな…。わかりやすく言えば、急に感情がなくなるのだ。
素っ気なくなるのとはまた違う。
ただ、顔から表情が消えていくような…。
僕を職場の仲間と認識していない。そんな感じ…。
そんなことがここ一年続いているのだ。
前までは、僕のことを睨んでいることが多かったが最近は違うのだ。
まあ、どこの職場にもそういう人は一人や二人は必ずいるだろうが、明らかに僕と話をする時だけ極端に態度を変えるのである。
これは僕の考え過ぎだろうか?
人によって話しやすい、話しにくいなど相性はあると思うが、例のあの人はいつも僕以外の職場の誰とも楽しそうに話しているのだ…。
なぜ? なぜだろう?
例のあの人は現在、職場にいる人に限らず新人にも同じ対応をするはず。
それはあなたの気のせいだろうと言われれば何も言えないが、実はこんなことがあった。
僕の職場は大きな物流センターで大手、コーヒーチェーン店の商品を多数扱っている。
例のあの人はこの現場の古参の従業員で、僕よりもこの現場のことをよく知っているのだ。
新人が入ってくると、まず間違いなく複雑な検品作業や、新しく新機能が実装されたハンディーを使ったピッキングなどで新人さんは慌ててしまう。
しかしだ…。
おかしなことに例のあの人は新人さんが困っていると必ず笑顔で懇切丁寧に作業手順を教えているのだ。
毎回。それも毎回である。
僕との違いはいったい何なのだろうか?
はあ。考えるだけでため息が漏れる。
じゃあ…そろそろ僕が実際に例のあの人にされたことを紹介していこうと思う。
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