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結宇が何か悩んでいるようだと日和が心配していたけど、大丈夫そうだね。
祈祷の準備中に告げられた時雨の言葉に、結宇は内心ギクリとした。
日和は負の感情に敏感だ。そして時雨も機微には聡い。
レポートで煮詰まっているかも、という当たり障りのない理由をあげて、結宇は時雨の前から逃げだした。
離れには近づかず、そのことを考えないよう意識しながら数日を過ごして。待ちかねた通話が来たのは、金曜日の夜中に近い時間だった。
「俺に用って、なに。忙しいんだけど」
笹塚大翔の苛立った声に、結宇は耳を疑った。
「ゴメン。どうしても聞きたいことがあって」
同じ町に産まれて、高校まで同じだった相手だが、幼馴染みと呼べるほど親しくはない。だがこんなふうに不機嫌を撒き散らす性格ではなかったはずだ。
「去年の夏、グループチャットで吉祥神社が話題になったでしょう。ウチの神さまが祟るって。最初にその話をしたのは大翔くんだって聞いたよ。掲示板で噂になっているって。でも、違うよね」
吉祥神社を単独で取り扱い、祟るという噂を取り扱っている掲示板がひとつしかなかった。だが掲示板で盛りあがっていたのはオンラインを活用する神社の有り様についてだ。祟りを話題にしているのは、掲示板を立ち上げた人物だけ。
「あの掲示板を作ったのは大翔くんだよね。その上で、わざとグループチャットに話題をあげて。……どうしてそんなことしたの」
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