押入れの貧乏神

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 掲示板で無視された祟りは、チャット上では信じる人も多くて盛りあがったらしい。  地元の高校で繋がったグループチャットだ。近場にある神社を参拝した人間は多いだろう。つまりは、願いが叶わなかった人間も多いということだ。  それに彼らは知っている。順風満帆に生きているように見える結宇が、不慮の事故で母親を失っていることを。  ならばサッカー部の主将が大会後に病を患ったのも、コンクールで入賞した美術部員が転んで骨折したのも、願いの代償だったのではないか?  そんなふうに噂が広がっていったのだ。 「おまえのところの神さまが不公平だからだよ」  大翔が犯人だという証拠はない。だがそれを否定することもなく、大翔は結宇の疑問を鼻で笑った。 「俺だって受験のときに、真剣に願ったさ。でも受かったのは滑り止めだけ。大学の近くに引っ越せば、この状況で授業は全部オンライン。毎日夜中までレポートに追われているのに、愚痴を言う友人もいない。何なんだよ、この状況! おまえは志望校に入って楽しくやっているんだろ。なあ、どう願えば希望が叶ったんだ? 俺も母親が死ねば良かったのか?」 「違う!」  気づいたときには叫んでいた。  けれど反論を重ねる前に、結宇はスマホを奪われた。  呆気にとられて動けない結宇の目前で、大翔との通話を切っているのは離れに住まう神さまだ。
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