バレンタインだからって浮かれてんじゃねぇッ!

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 たったひとつの思いつきに、ここまで金と労力をかけられる行動力と勇気。なにより、彼の憎むに憎めないこの性格。 「お前はきっと、大物になるよ」 「なんじゃそりゃ」  彼は若干不満そうな表情を見せながら、地面に落ちた板チョコを鞄に詰め始めた。きっとあのチョコはあとで彼がおいしくいただくことだろう。ついでに、私も一枚もらおう。  私はチョコによってもたらされた笑いの余韻に浸りながら、自分の下駄箱へと手をかける。そして、それを開けた瞬間チョコの雪崩(なだれ)が……ということはなかった。  が、 「あれ」  青い上履きの上に何かある。私はそれを手に取り、手前に引き寄せた。  赤と黒でできたギンガムチェック模様のかわいらしい包装。リボンとハートのシールで装飾された四角い物体。  隣にいるコレが、喉から手が出るほど欲しがっていたもの。 「ちょ、おま」  隣にいるなんかがなにか言おうとした瞬間に、私はそれを迅速(じんそく)に鞄へ突っ込んだ。 「いやぁ、今日も良い一日だった」 「一日始まったばかりだしッ! てかおまえさっきのそれ!」 「シラナイ、ワカラナイ、キコエナーイ」 「見せろオラ! ちょっとだけ! ほんのちょっとだけ! 先っちょだけでもぉ~!」  朝日が照らす廊下を友人と歩き、走る。  今日は二月十四日。良き一日が始まる。
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