2人が本棚に入れています
本棚に追加
たったひとつの思いつきに、ここまで金と労力をかけられる行動力と勇気。なにより、彼の憎むに憎めないこの性格。
「お前はきっと、大物になるよ」
「なんじゃそりゃ」
彼は若干不満そうな表情を見せながら、地面に落ちた板チョコを鞄に詰め始めた。きっとあのチョコはあとで彼がおいしくいただくことだろう。ついでに、私も一枚もらおう。
私はチョコによってもたらされた笑いの余韻に浸りながら、自分の下駄箱へと手をかける。そして、それを開けた瞬間チョコの雪崩が……ということはなかった。
が、
「あれ」
青い上履きの上に何かある。私はそれを手に取り、手前に引き寄せた。
赤と黒でできたギンガムチェック模様のかわいらしい包装。リボンとハートのシールで装飾された四角い物体。
隣にいるコレが、喉から手が出るほど欲しがっていたもの。
「ちょ、おま」
隣にいるなんかがなにか言おうとした瞬間に、私はそれを迅速に鞄へ突っ込んだ。
「いやぁ、今日も良い一日だった」
「一日始まったばかりだしッ! てかおまえさっきのそれ!」
「シラナイ、ワカラナイ、キコエナーイ」
「見せろオラ! ちょっとだけ! ほんのちょっとだけ! 先っちょだけでもぉ~!」
朝日が照らす廊下を友人と歩き、走る。
今日は二月十四日。良き一日が始まる。
最初のコメントを投稿しよう!