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地元を発つ前、母の遺品を整理するため実家に戻った。死期を悟っていたせいか物が少なく、拍子抜けするほどあっさり終わる。
元死神を産み落とすくらいだから、母も業が深い魂の持ち主で、今生では特に人の縁が薄かったようだ。母が亡くなったことで、白臣も天涯孤独になってしまった。
「こんにちは」
休憩がてら昼食でも食べにいこうと、近くの商店街をぶらぶらしていると、ふと知った声が聞こえる。振り向くと、不二夫が立っていた。
「久しぶりですね。お元気でしたか?」
白臣が店を辞めたと聞いていたから、つい呼び止めてしまったのだと小さくなっている。
「もともとこっちには、母が倒れて戻ってきたけど、亡くなったんだ。もう近くに縁者もいないし、これを機にと思って」
「そうだったんですね……俺知らなくて……御愁傷様です」
「いいんだ、もう整理もついてるし。それより不二夫くんは? 最近どうしてたの?」
不二夫を大切にしない元が嫌で距離をおいていたから、近況は本当に知らなかった。
「元さんとは別れました。というか振られちゃった。もう俺のこと必要じゃないって」
悲しんでいる不二夫をかわいそうに思うが、元と一緒にいたってこの先きっと、不二夫がしあわせになるとは思えなかった。だから、むしろほっとしている。
「そうか……だったらそんな男は、忘れてしまえばいい」
白臣が遠慮なくきっぱり言いきったので、不二夫は目を丸くしている。
「まだ出会っていないだけだ、最高の伴侶に。不二夫くんは絶対しあわせになるから、大丈夫」
「え?」
失恋直後の不二夫に届くかわからないが、安心してほしい。
玉湾が満足するのは白が報われない人生を送ること。それが白臣の業であり、それを全うするために不二夫がしあわせになることは必然なのだから。
「いつか絶対、不二夫くんは心から愛する人をみつけるし、その人は不二夫くんを大切にしてくれる」
「なぜそんな断言できるんですか?」
だって、ずっとそうだったって知っているから。 だから大丈夫なんだ。
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