オンラインカラオケ

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
くそ。最近このご時世のせいでカラオケができない。 友達をカラオケに誘ってもこのご時世だから断られるし、憂うつだ。 ため息をつきながらTwitterを眺めていたら、友達が『オンラインカラオケなう』ってつぶやいている。 『オンラインカラオケ?』 思わずリプを送ったら、なんでもこのご時世だからオンラインでカラオケをすることを思いついたらしい。 『まったく、相変わらずアイデアマンだな』 『そんなことないって〜。あ、参加する?』 答えはもちろん。 『参加する』 『久しぶり〜!』 『ああ、久しぶり』 わざわざオンラインカラオケ用のグループラインを作ったらしい。まったく、お前らしいよ。 『じゃあ、Jaysongでなんか曲選んでよ〜』 『了解』 久々のカラオケだ。何を歌うか迷うな。 でも、あまり迷っていたらあいつが『はやく決めてよ〜』と急かしてきたから『はいはい』と生返事をした。 『じゃあ、先に予約するから歌うね!』 『了解。そのあいだに決めとく』 あいつが西田夏菜子の「会いたくて」を歌い出した。 いつもは椎奈葡萄の「本能」からなのに珍しい。 まあ、たまには流行りのラブソングでも歌いたくなったのだろう。これはこれで悪くない気もする。 『あなたに会いたくて話題作りしちゃって』 ん? 『あなたと交わした約束愛おしくて時間が秒速で過ぎていく』 んん? 『あなたに気づいてほしいの』 『ストップ』 『え?いま、歌ってるんだけど』 『お前、今日は何日か分かってやってる?』 『え?』 『今日はバレンタインだろ』 ええええ?! とびっくりしているが、俺もびっくりしている。 『だって、これじゃまるで告白じゃないか』 『そうだよ』 え??? 二度びっくり。 『告白することばっかり考えていたからバレンタインのことは忘れてたけど…あのね、私』 『ストップ。その先は俺に言わせて』 『俺、お前のことが好きだ。付き合ってくれないか』 ずっと好きだった人から告白された。 どうしよう、泣きそう。 涙が頬を伝ってくる。 止まらなくなってきて、困らせちゃってるかも。 『おい、泣くほど嫌だったか?』 『ちがう!!!』 思いっきり否定したら、ほらまたびっくりさせちゃってる。 ちゃんと言わなきゃ、伝えなきゃ。 『私、好きな人に告白されて嬉しいの。嬉し泣きなの』 またボロボロ涙が溢れ出てくる。 『泣くなよ。』 あ、多分呆れてるかも。 『お前は笑顔のほうが似合う』 『で、でも…』 『いま、歌う曲決まったから歌う』 その曲は。 柚月の『君の笑顔が見られるまで』だ。 『君が泣いてると、僕も泣きたくなるよ』 『君は涙よりも笑顔が似合うよ』 『だから、笑って』 『君の笑顔が見られるまで僕は歌うよ』 こんなの、ずるい。 『おっ、泣き止んだ』 うん、お蔭さまで。 『お前の笑った顔見たいから写真送って』って言われたから照れて顔が真っ赤になってる写真を送った。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!