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いつものチカの部屋で、姿勢を正して意を決して切り出したオレの前。言われたほうのチカは鳩が豆鉄砲くらったような顔をしてた。そんな間抜けづらしてもイケメンは崩れないのがちょっと腹立たしい。
「……サク。ほんとにいいの?」
「うん。待たせてごめんな、チカ。決心ついた……っていうか、なんだろ、……自分のこと、ようやく認められるようになったっていうか」
大きな心境の変化っていうのは特になかったけれど、カフェの改革もあり、新人研修を請け負う立場になったりと少し自分の立ち位置が変わってきたことで、社会人としての自分を客観的に見られるようになってきた気がする。その結果、チカに依存しすぎてるかもしれない、ひとりでちゃんと立たなきゃ、っていう焦りのようなものも、いつの間にか消えていったのだった。
「一度一緒になったら、もう離さないんだからね」
ずいぶん重たいことばでチカが言うから、思わず笑ってしまった。けれども彼の表情は真剣そのもの。チカが相当独占欲が強いやつだって、さすがにもう知ってるよ。
「それでも、いいの?」
「……いいよ。願ったりじゃん」
「サク」
うれしい、ありがとう。そうささやいて、瞳をキラキラさせたチカは猛烈な勢いで抱きついてきた。そのあとのことは、まぁ、……あの。推して知るベし。
☆ ☆ ☆
「おつかれさまでしたー」
「ちょいまち」
バレンタイン当日。以前までとは雲泥の差で気持ちが軽い業務だけど、激務なのは相変わらず。ヘロヘロになって帰ろうとするところを、思いがけず星児さんに止められた。
「ん? なに?」
「このあとあいてる?」
「はぁっ? あいてるわけねぇじゃん。バレンタインだぞ? チカの誕生日だぞ?」
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