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「あ、じゃあ、さ。ちょっと聞いときたいんだけど、謝ったら二学期になっても放課後にここ来ていい?」
今度は章も訊く。
「な? は? あ?」
敦は会話について行けず、意味不明な言葉を発し続けていた。
「もちろんいいぞ。心から謝ってこい」
敦のことを置いてけぼりにし、どうやら話はまとまったようである。
居たたまれなさを感じ、敦は持っていたカバンをあらん限りの力で握りしめた。
やがて1時間目終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あ、敦。時間だぞ。教室棟の補講に遅れないようにしろよ」
知己がにこやかに語りかけると
「あんたに言われなくても分かっている! 今、チャイム鳴ったし! 目は悪いけど、耳は遠くない!」
敦は怒鳴った。
キレ気味の敦は少し気になるが、それよりも今は、章と俊也の二人がちゃんと卿子に謝ると言ってくれたのが嬉しい。
上機嫌に
「じゃあ、敦、また明日な!」
と知己が手を振ると
「……ぐぬぬぬ……っ」
敦が謎の唸り声をあげた。
「い、……言われなくても、また明日も来てやらぁ!」
捨て台詞と共に後ろ手で理科室ドアを激しく閉め、敦はずかずかと教室棟に向かっていった。
「なんで、あいつ怒ってるの? 複雑な年ごろ過ぎるだろ?」
残された知己が章に言うと
「先生が意外に黒い作戦ねじ込んだからじゃない?」
と答えた。
「俺、そんなに黒かったか?」
「真っ黒だった」
と俊也。
「とても人には言えないくらいに真っ黒だったね」
「そうだな」
「敦っちゃん、狡いの嫌いだもんね」
「そうか」
(昨日一生懸命考えた作戦は、そんなに狡かっただろうか?)
しかし、教師いじめのゲームよりは、はるかにいいと思うのだが。
(まあ、いいか。これで卿子さんの憂いがなくなるのなら)
と知己は思ったが、それは翌日には後悔に変わった。
クロードが
「知己、人に言えない所が真っ黒だという噂を聞いたんですが、本当ですか? ちょっと私に見せてください」
と言われ、敦が腹いせに妙な噂を流したのが判明したのだ。
とにもかくにも、その日、事務室ばかりか管理棟すべてにまで聞こえるほどの「さーせんっ!」の大音声が響き渡ったのは言うまでもない。
【おまけの4コマ】描きました。
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=341
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