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夏休みは もうすぐ 1
「あー! 敦。お前、とんでもねー噂流しやがって……!」
翌日の補講は2時間目が生物だった。
やってきた敦が理科室を開けたとたんに、知己は広められた噂のことを問い詰めた。
「俺は真実しか語っていない」
「どこが!?」
「あんな狡い作戦で出禁だわ補講終わらせようとするわなんて、腹黒いことこの上なし」
「腹黒なら、腹黒って言いやがれ! あんな誤解招く言い方すんな!」
「先生のこと『腹黒』って言っていいのか?」
「言ってい……いや、なんか語弊がある気もするが……」
「だろ? だから気を遣って、俺は『人には言えない部分が黒い』って言い方で抑えといたんだけど」
「先生、頑張って!」
1時間目から理科室に来て、掃除させられていた章が雑巾片手に知己の応援する。
「敦ちゃんに丸めこまれないで!」
「それも人聞き悪いと思うけど、なぁ」
俊也はハンディクリーナーの中のごみを捨てながら言った。
それを見て、敦が
「お前ら、本当に掃除させられているんだな」
と呆れたように言うと
「授業より百倍いい」
俊也がにこやかに答えた。
頭脳より肉体を動かす方が合っているのだろう。
「2時間目は敦が来たから通常の補講授業するぞ。掃除道具、脇に置いてこい」
知己が言えば、「はーい」と間延びした返事をしながら二人は理科室の隅に置きながら、席についた。
「……『片付けろ』とは、言わないんだ」
敦も二人の隣に座る。
「3時間目は準備室の方の掃除する予定だから、な」
知己の方は思いがけず章と俊也、二人分の労働力を得られ、掃除がはかどって喜んでいるようだ。
「やっぱり、十分腹黒いじゃねえかよ……」
敦は独り言ちた。
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