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夏休みは もうすぐ 2
いよいよ補講も最終日。週末の金曜を残すのみとなった。
「だいぶ綺麗になったなー!」
晴れ晴れとした笑顔で知己が言う。
補講3日目で全学習内容を終えてしまった章達の強制補講は、残り二日は理科室の片付けがメインとなった。
去年の理科担が例のゲームで無気力になってしまった為か、理科室は散らかり放題だった。敦達がたまり場にしていた特別教室棟。授業も教室棟で行っていたから、理科室自体にほとんど寄り付いていない。
知己も6月まではゲーム解読に悩まされ、片付けまでには気が回らずに、更に荒れ放題を極めた。普段は恐ろしいくらい掃除に無頓着な知己も、章や俊也は手伝うというので、今回の掃除チャンスは逃せない。知己はクイックルなんとかやハンディほにゃららやらを持ち込んで、これでもかと言わんばかりに備品棚の整理整頓をし、リノリウムの床を磨き上げた。
「どーせ、この後1カ月の夏休みなのに? バッカみたい」
掃除には一切加担せず、純粋な単位換算の為の補講を受けていた敦が苦々しく言うと
「お前らは夏休みでも、教員は夏休みじゃないんだぞ」
知己が答えた。
それを聞き
「え? そうなの?」
ペットボトルじょうろで、いつもはぼんやり眺めるだけの窓サッシの溝を掃除していた章が驚いた。
「まあ、よくそう思われるみたいだけどな。仕事だから、盆正月以外は勤務だ。お前らと違って休みじゃない」
さすがに薬品庫だけは、章達に手伝ってもらう訳にいかない。知己は、薬品の現存量を調べて帳簿と見比べながら薬品庫の整理をしていた。
(俺も教員になるまで「先生って、いっぱい休みがあっていいな」って思ってたし)
「じゃあ、夏休みも先生は学校に来るのか?」
マツウィ棒片手に、実験器具の棚の隙間を掃除していた俊也が目を輝かせて訊く。
「……そうだけど。お前らは来るなよ」
嫌な予感しかせずに知己が言うと
「誰が来るかよ」
一人毒づく敦の他に
「……ちっ」
二方向から舌打ちが聞こえた。
(危ねーな。強制補講終わった後の夏休みに、こいつら来る気になってたんじゃねえか)
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