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「相変わらず、掃除ばっかしているんだな。しかも生徒侍らして」
(こいつも、人聞きが悪い……)
思わず知己の眉間に皺が寄る。
「れ……蓮様!」
章が、嬉しそうに跨っていたサッシから飛び降りた。
「待ってましたー! ひたすら待ってました! 夏休みはきっと来てくれると信じてましたー!」
両手を広げて章は無謀にも飛びつこうとしたが、気持ちよく横からぱーんと張られた。
張られた章が一瞬左によろけたが、手加減してたのだろう。ぐらついた体は、踏みとどまって元の位置に戻ってきた。
知己は、やじろべえみたいだと密かに思った。
「おっす。お前ら、あれから先生にオイタはしてないだろうな」
門脇は、張ったその手を上げて、何事もなかったかのように挨拶に替えた。
「と、当然っすよ」
不幸にもドア付近の棚の隙間を掃除していた俊也が、門脇の眼を見ずにぎこちなく答えたら
「嘘つくの下手過ぎだな、おい!」
「いてっ!」
笑顔と共に門脇は俊也を左腕を伸ばす勢いで小突いた。
「画像増えたんなら、見せろや」
「それは無いっすー」
言っても信用してもらえず。
門脇は伸ばしたついでに俊也の胸元を掴んだ。引き寄せると俊也の制服の胸ポケットに入れていた携帯を抜いて、速攻、画像をチェック。その間俊也は小突かれた顔を押さえつつも、門脇の横でおとなしく携帯を返してもらうのを待っていた。
「つまんねえの。写真、撮ってねーじゃん」
ぽいっと投げ返すと、俊也は
「俺の5G!」
泣きそうになって慌ててキャッチした。
(門脇の言動に色々とツッコミたいが……)
もはや何をどうツッコんだらいいのか分からずに、知己は諦めた。
「ん? なんか生徒の数、増えてない?」
門脇がホワイトボード前の敦に目を留めた。
「この人が……門脇、蓮…………様」
敦が遅れて、『様』を付けた。
(え? 敦も「蓮様」呼び?)
敦の微妙な反応に知己が首を捻っていると、章が
「敦ちゃんも僕と同じで中3のカツアゲの時に蓮様に絞められたんだけど、認識するよりも早く眼鏡をふっ飛ばされたんで、顔はよく見えなかったんだって」
こっそり教えてくれた。
「じゃあ、もしかして敦も……?」
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