夏休みは もうすぐ 2

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「相変わらず、掃除ばっかしているんだな。しかも生徒(はべ)らして」 (こいつも、人聞きが悪い……)  思わず知己の眉間に皺が寄る。 「れ……蓮様!」  章が、嬉しそうに跨っていたサッシから飛び降りた。 「待ってましたー! ひたすら待ってました! 夏休みはきっと来てくれると信じてましたー!」  両手を広げて章は無謀にも飛びつこうとしたが、気持ちよく横からぱーんと張られた。  張られた章が一瞬左によろけたが、手加減してたのだろう。ぐらついた体は、踏みとどまって元の位置に戻ってきた。  知己は、やじろべえみたいだと密かに思った。 「おっす。お前ら、あれから先生にオイタはしてないだろうな」  門脇は、張ったその手を上げて、何事もなかったかのように挨拶に替えた。 「と、当然っすよ」  不幸にもドア付近の棚の隙間を掃除していた俊也が、門脇の眼を見ずにぎこちなく答えたら 「嘘つくの下手過ぎだな、おい!」 「いてっ!」  笑顔と共に門脇は俊也を左腕を伸ばす勢いで小突いた。 「画像増えたんなら、見せろや」 「それは無いっすー」  言っても信用してもらえず。  門脇は伸ばしたついでに俊也の胸元を掴んだ。引き寄せると俊也の制服の胸ポケットに入れていた携帯を抜いて、速攻、画像をチェック。その間俊也は小突かれた顔を押さえつつも、門脇の横でおとなしく携帯を返してもらうのを待っていた。 「つまんねえの。写真、撮ってねーじゃん」  ぽいっと投げ返すと、俊也は 「俺の5G!」  泣きそうになって慌ててキャッチした。 (門脇の言動に色々とツッコミたいが……)  もはや何をどうツッコんだらいいのか分からずに、知己は諦めた。 「ん? なんか生徒の数、増えてない?」  門脇がホワイトボード前の敦に目を留めた。 「この人が……門脇、蓮…………様」  敦が遅れて、『様』を付けた。 (え? 敦も「蓮様」呼び?)  敦の微妙な反応に知己が首を捻っていると、章が 「敦ちゃんも僕と同じで中3のカツアゲの時に蓮様に絞められたんだけど、認識するよりも早く眼鏡をふっ飛ばされたんで、顔はよく見えなかったんだって」  こっそり教えてくれた。 「じゃあ、もしかして敦も……?」
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