夏休みは もうすぐ 2

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「実は私、ミス慶秀大になったの」  一呼吸おいて、美羽は話し始めた。 「ああ。家永から聞いてるよ。おめでとう」 「あ……! い、う……ん。えーっとぉ、い、家永……准教授……ね」  なぜか滑舌悪く五十音でも言いだしたかのような美羽だった。 「先生の友達なんでしょ?」 「ああ、そうだけど……?」 「そう……」  浮かぬ顔の美羽の言葉に反応したのは、 「ミス……?」  意外にも敦だった。 「今年の?」 「ええ。そう」 「……じゃあ、お前か?」  門脇に腕を回していたというのもあってか、美羽に対して敦は厳しい口調だった。 「?」 「TV局の取材も特集の編集もほぼ終わっていたというのに、妙な発言で放映をお蔵入りさせたっていう今年のミスは、お前か!?」  放送中止?  それはただ事ではない。  そんなことを元・教え子が引き起こしたと聞き 「御前崎……」  知己が顔色悪く 「一体、何を言った?」  と尋ねた。 「別に変なこと言ってないわよ。『白衣は好きか?』って言ったの」  だが夕刻のお茶の間に流すには憚られたのだろう。番組は突如中止になった。 「なんで敦は、そんなこと知ってんの?」  今度は敦に訊くと 「兄貴から聞いた。うちの会社がスポンサーの特番だったんだ。広報部とタイアップしての番組だったんだって。お蔵入りで、取材した労力も時間も費用もすべてポシャったって。頭抱えてた」  と答えた。 「提供は梅ノ木グループでしたー! みたいな?」  章がふざけてTV番組を装う。  美羽は開き直って 「だったら、NGワード決めてミスコンで言わないようにってしてたら良かったのに」  と言うと 「もう、した。来年度から同じミスは起こさせない」  敦は冷静に対応していた。 「洒落か?」  俊也が言えば 「……洒落じゃない」  思いがけない親父ギャグとなり、敦は歯切れ悪く答えた。   「……あー、まあ、そういう訳で」  美羽はすぐに気持ちを切り替えた。 「優勝したのはいいんだけど、ミスになったら、なんだかストーカーみたいなのが何人も現れて、私の周辺をうろうろするようになっちゃったの。それで、怖くなったんで門脇君に彼氏兼護衛役を頼んだの」 「それは……適任だな」  高校時代から美羽の気持ちを知っている知己は、微笑ましく思った。  門脇に守ってもらえるのなら御前崎も望むところだし、何より門脇の腕っぷしの強さは折り紙付き。美羽の安全は保障されている。
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