夏休みは もうすぐ 2

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「美羽ちゃん? 会いましたよ」  あんな状態だったが、美羽も玄関で事務室に寄り、きちんと「来校者」退出手続きを踏んだようだ。そこで、前任校の文化祭をきっかけに仲良くなった事務職員・坪根卿子と話して帰ったらしい。 「そうなんですか」 「来た時もここでちゃんと来校者手続きしたんだけど……」 「?」  卿子のトーンが下がる。 「その時は以前の美羽ちゃんだったんだけど、帰りはなんだか元気ないような……。それが、ちょっと心配で」 「え?」 (相変わらず卿子さん、鋭いな。よく見ている)  と知己は思ったが、その差は歴然だ。  WITH門脇とNO門脇の差。  今、ここに一緒に来たはずの門脇が一人で退出手続きしている事実で分かる。  美羽の退出時間を見ると、今より3分前だった。 「門脇……」  知己が声をかけると 「はい、はい。追えって言うんでしょ?」  めんどくさそうに、門脇は返事をした。 「門脇君。お願い」  卿子まで門脇に切実な目を向けて頼んだ。 「だけど、ここから駅に向かったかバス停に行ったかで、だいぶ道は変わるよな。追ーいつーくのかなー?」  脇から来校者名簿を見てにやりと嬉しそうに笑う俊也を、門脇が左手を上げるタイミングで下からパーンと払うように殴った。 「か、門脇君……?」  怯える卿子だったが、俊也はなぜか 「……っ、あざぁーっす!」  と、よろめきながら叫んでいる。 「学習しなよ、俊ちゃん」  章がよろけた俊也の手を掴み引っぱってくれたので、俊也は張られた頬から顎の辺りを押さえつつも転ばないで済んだ。 「蓮様の間合いで言うから」  敦が言うと 「……馬鹿だな、敦。蓮様の間合いじゃなくても、蓮様なら間合いを詰めて取りに来る」  衝撃の激しさに、いまだフラフラしつつも俊也が言うと 「それだけ分かっててあの発言したのなら、馬鹿はどっちだよ」  敦は呆れていた。 「あの、美羽ちゃんの行先なら」  卿子がおずおずと知己と門脇に話しかける。 「確か……『これから五寸釘と五徳と蝋燭買って帰るんだ』とか言ってましたけど」
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