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次の瞬間、男は通路に弾け飛んでいた。
まるで止まっていた時間が流れ出したかのような感覚。
美羽はパチパチパチと瞬きを三度した。
「てめえ。俺の女に何してくれる」
いつのまに来たのだろう。美羽の隣に門脇が立っていた。
ストーカー男の顔面を的確に打ち抜いた拳を戻し、胸の前で合わせて、殴り足りないとばかりに指をペキペキと鳴らしている。
「か、……門脇君……」
喉につっかえていた空気の塊がやっと取れたかのように、美羽は言葉を取り戻した。
温かな血が全身に通い出し、顔に健康的な赤みが差す。サクランボのような艶やかな唇がパクパクと動くが、あまりのことにうまく言葉にならないようだ。
「どうする? もう二・三発、殴っとくか?」
瞬殺の一撃でDIYコーナーの通路を倒れた姿勢のまま数m滑った男の意識は確実に飛んでいたが、門脇は敢えて美羽に尋ねた。
美羽はそれには答えずに、
「門脇君っ……!」
レジかごを放り出し、門脇の胸に飛び込んだ。
─夏休みはもうすぐ・了─
【挿絵を上げてみました。】関連イラスト
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=389
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