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夏休みが来た 2
その日は、うだるような暑さだった。
家永ではないが熱帯夜続き。昼間は体温並みの気温が続いた。夜でさえそうなのだ。昼間はしゃれにならないくらいに暑かった。
その日、知己は理科室の放置され続けたゴミを出しに奮闘した。
(章達が居る時にすればよかった……!)
と少なからず思ったが、労働力差っ引いても余りある文句、教師への不満、誹謗中傷の罵詈雑言しか言わないだろうから、頼まなくて正解かもしれない。知己は精神的疲労より肉体的疲労の方がマシだと思った。
章達は補講を終え、八旗高校は生徒の来ない真の夏休みを迎えた。
知己は、仕事から帰ってすぐにシャワーを浴びた。
汗と埃でドロドロだった。
ゴミ出しを終えてボディシートで拭ける所をさんざん拭いたが、その後も汗は流れるほど暑かったし、べたつく体がより暑さ感じさせた。
頭をわしゃわしゃと洗ったついでに、シャンプーでそのまま体まで洗った。我ながら横着だと思ったが、面倒臭さが勝った。それほど知己は疲れていた。
夕飯は、見かねてゴミ出しを手伝ってくれたクロードにお礼がてら店屋物を取って済ませた。(一緒に夕飯を食べに行くのは、さすがに将之に怒られそうだったので、しなかった。)
これでもう、後は寝るだけ。
ちょっと早いが、今夜は布団に直行したい。
(今夜は将之がちょっかいかけてきても、無視だ。無視!
……ん?)
その時に、ふと思い出した。
「そういや飯食ったこと、将之に知らせてなかった気がする」
ばたばたと気ぜわしくゴミを運び出し、その後はひたすらデスクワークをしていたので、メールを送った記憶がない。
19時を過ぎたのに、まだ、将之も帰ってきていない。
(教育委員会も忙しいのかな?)
と思う。
教育委員会も
「夏休みは夏休みでしかできない研修だの出張だので忙しいんですよ」
と言っていた。
(と、いうことは、あいつも夕飯を済ませて帰ってくるかもしれない)
それなのに、知己の為に食べもしない食事を一人分作らせるのは気の毒だ……と思った。
メールなり電話なりとにかく連絡を取ろうと大急ぎでシャワーを切り上げ、脱衣所に移った時だ。
玄関でガチャガチャと鍵を開ける音がする。
「あ、帰ってきた。今すぐ、言おう!」
ドアが開くタイミングとほとんど同時に、水滴拭きかけの体にバスタオル一枚、肩から羽織って玄関に飛び出した。
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