夏休みが来た 2

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「えーっと、後は……バスト? 胸が有ったら完璧なのにとか、『男子校で何言っているの、お兄さん?』的発言があった気がする……んぐぐぐ」 「礼ちゃーん! 僕、今夜、命の危機に瀕しているから。もう、お仕置きどころじゃなくなっているから。プラマイ0どころか、マイナスになってるから!」  どんどん冴えてくる知己の殺意の眼光に、心底怯えながら将之は礼の口を塞いだ。 「礼ちゃん、いい子だ。もっと教えろ」 「んー! んー! んー!」  礼が口塞ぐ将之の手を指さしてアピールすると 「もっともだな。  将之。もう十分すぎるほど、お前の評価はマイナス。ストップ安状態。もはや下がりようがないから、その手をどけろ」  知己が睨みつけながら命令する。 「うっ……」  その威嚇に負け、渋々将之が手を離すと礼は深呼吸をした。 「礼ちゃん。頼むからもうその辺で……」  小さい声で両手合わせて頼んでみたが、礼は 「ええっと、あとはね……」  将之ばりに空気を読まずに会話を続けた。  将之がゲストルームに礼を通した。 「お前、宗孝が泊りに来た時にここを使わせてくれなかったくせに」  将之の家は8LDKであるが、住んでいる人間は二人。当然、使っていない部屋の方が多い。 「ここは元・礼ちゃんの部屋ですから。あんなガキに使わせませんよ」  すまして将之が答えた。 「ああ、そうかい。」 「なんか言いました?」  いそいそとベッドに掃除機をかけていたので、聞き逃したようだ。 「何にも。たいしたこと言ってない」  知己の話もろくに聞かずに、将之は収納庫より客布団を引っ張りだしてきた。 「連絡くれてたら、準備していたのに」  てきぱきとベッドメイクを進める将之が言うと 「サプライズ。お兄さんを驚かせたかったの」  クスクスと礼はいたずらっぽく笑った。 (実際には、俺と礼ちゃん本人のサプライズになっちゃったけど)  ゲストルームで繰り広げられる仲良し兄妹の後ろ姿を見つめながら、全裸見られた恥ずかしい光景を知己は思い出していた。 【平野知己の甥っ子・宗孝5歳の話は「後・教育ノススメ。」にあります。】 https://estar.jp/novels/25333614/viewer?page=106 【挿絵をあげてみました】 https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=53
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