夏休みが来た 3

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「それ、傍らにすること?」 「学芸員と言っても色々あるんですよ。私はロボット工学専攻の延長線上みたいなもので技術系学芸員を取ったの。マサチューセッツの近くにスミソニアン博物館あるもんで、何度か見に行っているうちに、つい資格を取りたくなっちゃって」 「……で、取れるものじゃないだろ?」 「そんなに難しくないですよ。今やってるカリに、ちょっと単位を追加したらいいんですから」  礼の感覚は将之の言うように確かに常人離れしているようだ。 「平野さんもアメリカ来た時には、私で良ければご案内しますよ。ただ、一日じゃ回り切れませんけど」 「?」 「スミソニアン博物館は美術館・博物館の集合体ですから。本気で見ようと思ったら数日かかります」 「さすがアメリカ。スケール違うな」 「そんな感じで、通い詰めちゃったんですよね」  礼が笑ったので、つられて知己も笑った。  この懲り方……研究家体質なんだろうな、と思う。  似た男をよく知っている。  根詰めて研究に没頭し、つい体調を崩してしまう……ついでに言うと多分エッグベネディクトを知らないと思われる男。 (礼ちゃん。家永と気が合いそうだな) 「……」 (絶対に紹介しないけど、な)  家永と犬猿の仲の将之。その妹が万が一にも意気投合したら、恐ろしい化学変化が起きそうだ。 「ねえ、お兄さん。明日、一緒に行ってくれる?」 「そうだね。休み取れたら一緒に行くよ」 「え? 取れないの、休み」  瞬時に礼の顔が曇る。 「急には、ね」 「そんなぁ」 「だから、いつも来るときは連絡頂戴って言ってるよね? 今、ちょっと立て込んでいるから厳しいなぁ。土日の休日なら大丈夫だけど」  将之がアナログにも手帳でスケジュールを確認していると 「じゃあ、平野さんは?」  くるりと向きを変えて礼が知己に声をかけた。 「え? 俺?」
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