夏休みが来た 5

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「ところで君は、レポートは何で書くつもりなの?」  別れ際に礼が俊也に尋ねた。 「よくぞ聞いてくれた!」  目前にそびえる骨格標本に俊也が視線を移す。 「俺は、『ティラノサウルスとTレックスの違いについて』。かっこいいよなぁ。ティラノ一択だよ。やっぱ書くなら、これっしょ! これしかなーい! 肉食獣、かっけー! マジ好き!」  細い目をより細めて、うっとりと眺めながら嬉しそうに薄い内容をベラベラと語る。 (俊也ってこんなに喋る子だったっけ?)  理科室に来ていた時には、話すのは章とがメインで知己とは少しだけって感じだった。  そういえば話題がモルカーの時だけは、長々とその愛らしさ面白さについて語っていたなと知己は思い出していた。 「……そう」  一方礼は、俊也のレポートのテーマを聞いて、頭を横に振りながら至極残念そうに視線を落とした。  「親切な君だから、お礼までに教えておくわ。それ、寸分違わず同じものだから。1ナノミリの違いもないから」 「あ?」  畳みかける礼の言葉に、俊也が止まった。 「俊也。頼むから、もう少し勉強しろよ……」  隣の知己は眉間を押さえていた。 「そっか。じゃあ、『違っているように聞こえるけど、実は同じものでした』ってオチのレポートにするよ」  めげずに俊也は親指を立てて、言った。 (レポートで『オチ』、言うな)  せめて「結論」と言ってくれと思ったが、それ以上に俊也のレポートに及第点が下りるのか、知己はすこぶる不安になった。
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