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「だいたい先生、酷過ぎぃ。どうして俊ちゃんには会っても、僕らにはこんなコソコソ逃げ隠れするようなマネするの?」
章が唇を尖らせて言う。
「お前らが、俺にこんな絡み方するからだろ?」
俊也の予言通り、めでたく知己は章達に絡まれることとなっている。ついでにいえば、知己の予想通り、被害は礼にまで及んだ。
「でも、先生にはお金たかったりしないよ」
「最初から、うなるほど持っているお前らにたかられるとは思ってない」
梅ノ木グループ三男坊が、そこで「ふふん」と鼻で笑った。
そこで、ふと知己に疑問が過る。
「あれ? じゃあ、二年前にたかってたのは何でだ?」
「受験への不安とストレス発散……かな? 僕ら小心者だから、受験が怖くて、誰かに当たらずにはいられなかった」
悪びれずに章が言うと
「自己中な理由だ」
知己は頭を抱えると同時に納得していた。
(道理で門脇をリスペクトするわけだ)
彼らのやっていたことは、理不尽な理由で暴力をふるった門脇となんら変わりない。
「僕らはしてないけど『万引き』とかも、そうじゃないの? 大抵、自分の心満たすためにやってると思うな。詳しくはないけど、本当に生活のためにやっているのは一部じゃない?」
「じゃあお前らは、なんで万引きはしなかったんだ?」
「モノは、それこそ唸るほど買い与えられていたからね」
「こそこそ盗み働くより、人を怯えさせる方が面白いじゃん」
(過程の違いかよ)
最低な理由に、知己は更に項垂れた。
「お前ら、いつか警察に突き出されるぞ」
「今はしてないよ。それにもう2年も前のことだから時効」
「時効は、そんなに短くないぞ」
「でも、証拠らしい証拠なんて残ってないもんねーだ」
敦が、あっかんべーとして見せる。
(あ゛ー、ほんっとぅにめちゃくちゃ可愛い教え子だよなぁ)
と、知己がうんざりしていると
「やだ。面白い。犯罪心理学は専攻の範囲外だわ」
礼が興味津々で、自分から話に入ってきた。
「礼ちゃん。多分だけど、聞く価値はないと思う」
これ以上、礼に妙な扉を開かせてはならない。兄・将之が悪い手本だ。
「実はね、さっき早々にレポート書き終えた俊ちゃんが、昼を待たずに僕たちの所に来たんだ」
章が、ずっと後ろにいる俊也の背を押して、知己の前に突き出した。
(情報源は俊也……。当然だな)
釘を刺しておいたはずだが……と、じろりと俊也を睨む。
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