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「あ、あはは」
気まずそうに俊也は乾いた笑いを浮かべ、知己から目だけを反らした。
「俊也。会った時に、なぜかすごく機嫌良かったからな」
「聞いたら『課題ももう済んだ』とか、『先生に会った』とか言うんだもん。『レポートのネタももらった』って言ってたし。ずるいよ。
だのに先生は僕らの居ること分かっている筈なのに、ここには来ないから、これはもう待ち伏せるしかないよね? ってなって」
嬉々としてつらつらと語る章の話を聞きながら、知己は黙って俊也を見つめる。
知己の責める視線に耐えられずに、俊也が
「あ、あの。ごめん。だって、でも、仕方なかったんだ」
しどろもどろになりつつ謝った。
「お前とは、もう口きかない」
約束を遂行しようとする知己に
「あっ。でも、俺、LIN○は送ってないからな」
俊也が食い下がる。
「そうだよ。先生。俊ちゃんは直接口を割ったんだ。だから責めないであげて」
章がフォローにならないフォローを入れた。
「なお、悪いじゃねえか」
(まあ、俊也には、こいつら相手に黙っておくことは難しいよな)
正直、当てにはしていなかった。
LIN●送らなかっただけ、俊也にしては上出来かもしれない。
(ん? 俊也から話を聞いていたのなら……)
知己は察した。
「じゃあ、お前ら。礼ちゃんのこと『妹』だと分かってて、『デート』とか揶揄ったのか?」
「そうだよー」
きゃっきゃきゃっきゃと笑う章と敦に目もくれず
「な、言った通りたち悪いだろ?」
知己が礼に話を振った。
礼は「ほんとだー」と頷いた。
「で、こちらが先生をパシリにしているというスーパー美人の妹さん……」
改めて、礼を物色するかのように章達は眺めた。
む、となりつつ、章達の不躾な視線から礼を背中に庇う。
「なんで、俺がパシリになったんだ?」
「俊ちゃんが、先生は妹さんに『焼きそばパンくらい買って来なさいよ』って言われてたって」
「……俊也」
(また、こいつかよ)
視線で文句を言えば
「なんだよ、嘘言ってねえよ! 洗いざらい見たまんま聞いたまんましか喋ってねえよ」
俊也は懸命に弁明した。
「洗いざらい喋ってんのが、悪いんだろ!」
「あ、そっか」
俊也はやっと分かったようだ。
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