243人が本棚に入れています
本棚に追加
「んー。確かに妹さんは先生と同じでスーパー美人なんだけど、先生とは全然似てないな」
分厚いメガネの向こうで、敦が言う。
「何、言ってんだ。クリソツじゃねえか」
俊也は、多分、彼は映画やドラマで人物がたくさん出ると混乱するタイプと思われた。
「いや、全然似てないし。俊也、どこ見てんの?」
「どこって……、顔」
「うーん。似てると言ったら…‥目が二つで鼻と口が一つな所くらいだな」
敦から「人類みな兄妹」発言が飛び出した。
その隣で、章が静かに口を開いた。
「……本当に兄妹?」
と。
ぎく。
(さすが章。鋭い!)
「本当は兄妹じゃないんじゃない? 俊也や僕たちを騙すために嘘ついて、実はきっちりデートお楽しみ中……とか」
冷ややかな視線が、知己と礼に浴びせられた。
章と敦は限りなく疑っている。
章はどうしても「博物館デートしていたとバラされたくなければ、自分達にも構うがいい」の姿勢。敦も、知己の弱みを握りたい一心なのだろう。
そう思い通りにいかせるものかと
「兄妹だ」
知己が言い張る。
「……それなら……」
今度は、敦が口を開いた。
「本当に兄妹なら同時に父親の名前を言ってみてよ」
「は?」
「ちゃんと言えたら、信用する」
敦。
こんな時に無駄に才覚を発揮する。
兄妹なら当然知りえているが、恋人同士ならば、父親の名前まで教え合っている場合は少ない。教え合っていたとしても、知己の父か礼の父か。どちらの父親の名前を言うべきか相談しなくてはならないから、すぐには答えられないと見越している。
(あー。もう。だから、こいつらに会いたくなかったんだ)
その熱意をどうして勉強に向けてくれないのか、と知己は思う。
だが、ここで想定外のできごとが起こった。
「父……?」
礼の態度が一変したのだ。
最初のコメントを投稿しよう!