夏休みが来た 8

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「なんなの、このハズシ状態は!? なんで先輩と礼ちゃんばっか仲良くなって、僕はハブなの?! おかしくない?」 「ハブ? 毒蛇?」  生き物大好き・礼の目が瞬時に輝く。 「そのハブと違う!」  礼は多分、ツッコミ待ちのボケで言ったのだろう。その証拠に将之に突っ込まれて、嬉しそうにきゃっきゃと笑っている。  中位兄妹のレクレーションは、ほっといても良さそうだ。 「まあまあ、将之。そう荒れるな。残業頑張って、お前、疲れているんだろ? だからそんなに怒りっぽくなって。お腹もすいているんだろ?」  ここで知己は、将之の機嫌を取るとっておきの一手を出すことにした。 「え? あ、それはまあ。時間も時間ですし」  時刻は19時を過ぎている。将之が「明日の分まで仕事」と頑張った為、いつもの夕飯の時間はとっくに過ぎていた。  ただ、この会話を切り出したのが知己なので、将之のこめかみに冷汗が流れた。どこかで死亡フラグが立った音も聞こえた気がした。 「安心しろ。夕飯、作っといた」 「先輩が? もう、その段階で安心できない」  予感的中。 「酷いわ、将之お兄さん」 「作ったのは礼ちゃんだよ」 「え? マジで? 嬉しいな!」  からの、掌返し。 「それはそれで酷いな。将之」  分かっていた反応だが、地味に知己は傷ついた。 「だって、すぐに分かったもの。知己お兄さん、料理のセンスの塊だって。だから食材全部取り上げて、私が作ったのよ」 「礼ちゃん、グッジャブ!」  聡い妹の発言に一瞬喜んだが、朝の言葉の変化に将之が気付いて、またもや顔色を変えた。 「ん? 今、『知己お兄さん』って……?」 「成り行き上だけど、礼ちゃんは俺の妹なんだ」  今日は、何度も助けられた礼の言葉だった。  今となっては、すっかり知己の耳に馴染み、むしろ「平野さん」と呼ばれると落ち着かない。  嬉しそうに語る知己に、 「知己お兄さん、大好き」  礼が腕を組んでじゃれる。 「うぐぐー! 嫉妬しかないー!」  それを見て、将之は唸るしかなかった。
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