夏休みが来た 9

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「他に何か買ったのか?」 「うん。えーっとね」  礼が大袋からゴソゴソと探す。 「?」 「はい。知己お兄さんに、これ」  礼から手渡されたのは、小さな紙袋。  ブランド名のついた紙袋の中を知己が覗くと、青と銀の細いリボンで結ばれた小さな箱があった。 「お留守番、ご苦労様ー」  知己へのプレゼントだった。 「気を遣って、私とお兄さんの二人きりにしてくれたんでしょ? ありがとう」  無邪気な笑顔を向けられて、知己は赤くなって、顔を背ける。 「気なんて遣ってないないよ。将之がうるさいからだよ」 「嘘」 「本当。博物館のことをいつまでもグチグチ言うから」  実際にグチグチ言われてた。昨日からずっと。今朝も出かける寸前まで、両手の親指を付けたり離したりを繰り返すあのポーズと共に。 「うふふ。いいわよ。そうしておいてあげる」 「だから、これはもらえないよ」  まだ院生である礼がこれだけの買い物したら、大した出費だ。その上、知己へのプレゼントなど、とてもじゃないがもらえないと思った。 「そう言わないで、開けてみてよ」  礼があまりに勧めるので、知己は封を解いた。  金属が上品に輝く先端に、四葉のクローバーを彫ったネクタイピン。 「礼とお揃いって言っても?」  礼は、ちらりといつもつけている金鎖のネックレスを見せた。 「……」  ネックレスには、昨日はついていなかったネクタイピンと同じモチーフの飾りが通されていた。 「知己お兄さんには、幸せになってほしいから」 (……には?) 「あの人とうまくいきますようにって願ってる」  初恋から4年。それからまだ良い出会いがないのだろう。
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