夏休みが来た 10

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「鰻に梅干し。天ぷらに西瓜。礼ちゃんに父」 (食い合わせか?) 「先輩が地雷踏む方が、憂いを残す結果になりませんか?」  将之の例えはどうかと思われたが、分かりやすくもあった。 「う……ん。確かに、お前の言うこともありうるな」  とりあえず、知己は将之から離れて体勢を整えた。 「じゃあ、もしも……だけど、もしもまた礼ちゃんがお父さんのことを匂わす行動を取ったら、その時は、俺、話すけどいいか?」 「元・コミュ障なのに?」  走馬灯で高校時代知己とあまり話せない思い出も蘇っているらしい。 「それはお前の高校時代の俺の評価だろう?  そりゃ、今だって話すのはそんなに得意じゃないから、お前が訊くのが一番だろうけど」 「僕が……?」  意外だと驚く将之に (こいつは、礼ちゃんに対してはオールOKのYESマンだもんな) 「今回ばかりはどう考えても人選ミスだから、俺が訊く」  やはり知己が訊くことを主張した。 「先輩……。今、何か失礼なことを考えているでしょ」 「そんなことはない。そんなことはないけど、……邪魔はするなよ」 「もちろんです」  さっき知己に対して拉致っぽいことをした男が、平然と答えた。 「絶対に邪魔するなよ」 「むしろ協力しますよ」 「それっぽいことがあったら、絶対に教えろよ。誤魔化すなよ」 「分かってますってば。僕だって、礼ちゃんには幸せになってほしいんだから」 「絶対に絶対だからな!」 「……僕って、信用ないんですね……」  今度は将之が海の方を遠い目で眺めた。 「おい、そろそろ時間になるぞ。戻ろう」  時刻は、将之の言った約束の時間を迎えていた。
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