夏休みが来た 12

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「……」  さっきの「ちょま」連続のテンションとは真逆に、今は微動だにしない礼に 「あの、もしかして……あからさまに引いている?」  おずおずと知己が訊いた。 「引いた……。ドンが付くほど、引いた」  放心したかのように礼は茫洋と知己を見つめる。 「つまり……知己お兄さんと将之お兄さん、二人は……………?」  震える指で知己を指さし、次に今は買い物に出かけている将之をイメージして外を指さす。 「……そう」  知己が真っ赤になってコクンと頷くと、次の瞬間、枕が知己に飛んできた。 「出てってー!!!!!」 「え? 何?! 突然、何?!」 「もいきー!!!!!」 「え、あの、続き……もうちょっと話したいことがあるんだけど。ちょっ、聞いt」 「いやぁ! もいきーったら、もいきー!」  礼は投げつけた枕を拾うと、そのままそれでバスバスと往復ビンタの要領で叩く。  知己は、もはや面倒発動時の将之に対する同等の扱いを受けていた。  いや、枕での間接攻撃。  触りたくもないのだとすると、将之以下の扱いだ。  ほんの数分前、知己の背に回してしがみついた礼の手のぬくもりが、これほど遠く感じられようとは。 「ちょっと待ってったら……」  言いつつも、礼の剣幕に押され知己は後ずさりをした。  ドンと背中がドアにぶつかる。 「出てって―! 早く、出てって―!」  とはいえ、後ろのドアには鍵がかかっている。  そう簡単には出られない。  枕の猛攻を被弾しつつもなんとか鍵を外してドアを開けた。  転がるように知己は廊下まで押し出されると、またもやドアをばたんと閉められた。 「もーいーきーーーーー! 無理無理無理無理ぃ!」  ガチャリと素早く鍵が閉められる音がした。 「礼ちゃん? あの、もうちょっと話を……!」  ドアを叩けば、さすがに防音効果高いと言えど、それは聞こえたらしい。だが 「嫌!」  知己を一刀両断する礼の返事だけだった。
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