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「どう!? 私、頑張ったでしょ?!」
礼が真っ赤になりながらも、同意を求めてきた。
急いで空港に来た理由を聞かれてもいないのに怒涛の勢いで喋る礼には、昨日までの拒絶は感じられない。
(もしかしたら、これって話ができるチャンス?)
それなのに、実の兄はというと
「んー? それなら僕らにもちゃんと言ってほし……イターっ!」
空気も読まずにあまりにも率直な意見を言うので、知己は慌てて運転席を後部座席から蹴り上げた。
「礼ちゃん。偉かったね……」
母に……ではあるけれど、連絡とった礼を褒め称えたい気持ちでいっぱいだった。ただ、知己には想定5歳児を褒める言葉しか持ち合わせていなかった。
「う……ん。そ。……C言語、頑張るつもりなの」
それでも気持ちは通じたみたいで、礼は認められた嬉しさで泣き出しそうな顔をした。
「父には、さしずめ……F言語で話してみるつもり……」
「礼ちゃん……」
ネックレスに通した四つ葉のモチーフを、ぎゅっと握りしめる礼の真剣な顔。
隣の運転席で将之は
「さっきから、一体、何なんです? C言語? F言語?」
怪訝な顔でしつこく訊いてくる。
知己と礼、二人だけで分かる言葉が許せないのだろう。
あからさまな嫉妬だった。
C言語のCはコンピュータのC。
Fはファーザー? ファミリー? どっちだろ?
いずれにしろ、二人の話し合いの場はできていた。
(良かった……)
知己は心底、安心した。
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