悪名高き八旗高校 3

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「責任、とってよ」 「せき……にん?」 「そう、責任」 「……」  言われた意味が分からずに不安げに揺れる卿子の瞳に、 「あー、何、その不満そうな顔」  俊也は更に追い込みをかけた。 「もう、新聞社とかにチクっちゃおうかなー。『高校職員、高2生徒に頭突き。』とか。いい?世の中は、学校ネタ、警察ネタ、不祥事ネタ、大好きなんだってさ。『八旗高校、生徒も最低なら職員もダメダメだった!』みたいな。きっと、この話に飛びつくと思うよ。あ、今はSNSとかの方がいいか。すぐに炎上するからな。  それでいい?」  卿子は青ざめ、恐怖で声が出ない。言葉なく、首を横に力なくフルフルと振る。 「じゃ、お姉さんに頭突きされたこと誰にも言わない代わりに、ちょっと言うこと聞いてくんない?」 「え?」 「お姉さん、ちょっと立ってみてよ」 「……?」  言われたものの、卿子がいまだ戸惑っていると 「立てって言ってるだろーがぁぁぁっ!」  突然、細い目と整えられた眉を吊り上げて、俊也が声を荒げた。こんな時は人相の悪さが役に立つ。 「きゃあ!」  ますます怯える卿子に業を煮やし、俊也が 「ちっ」  舌打ち交じりに腕を掴んで乱暴に引き上げたので、卿子は強引に立たされた。  よろめく卿子が倒れないように掴んだまま、顔を下から覗き込む。 「前々からお姉さんの足、綺麗だなぁと思ってたんだよね」 「……?」  今日の卿子は膝下長さのペパーミントグリーンのワンピースを着ていた。爽やかで鮮やかだったそれは、先ほど非常口ドア前のコンクリートに倒れたはずみで無残にもあちこち土がついている。  俊也はそれを見ながら 「だから、さ。ちょっとだけスカート上げて、生足見せてよ。それであんたの頭突きはチャラにする。どう?」  と取引をもちかけた。 「……」  卿子は怯えて声が出ない。やはり首を横に振って答えるだけである。 「あのさー……」  卿子の態度に、俊也が苛立つ。 「何もパンツまで見せてって言ってんじゃねーんだぜ。そうだな……。ちょっとスカート上げて太腿辺りまで見せてくれたらいいんだ。見せるだけ。俺たちは触らない。これならいいだろ? 減るもんじゃあるまいし、それで何もなかったことにしてやるって言ってんだぜ。な、章」 「ああ。うん」  返事をしたが、相変わらず章は二階から降りてこない。LINEをしているのだろうか、階下からは分からないが、ずっと携帯を触っているようだ。
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