夏休みが来た 12

25/27

242人が本棚に入れています
本棚に追加
/778ページ
「また、いつか来てくれる? あの家に」  あの家は、礼が日本で一番長く住んでいる所だ。  礼にとっての故郷だ。 (嫌だと言われたら、どうしよう……)  一抹の不安が過る。 (嫌だと言われたら、俺は……実家に戻ろう。いや、戻るべきだ)  とは思うが、いまいちその決心はつかない。 (元々、あそこは礼ちゃんの家なんだから……)  気持ちの整理がつかないまま真下の礼を見下ろす。   「……」  しばらく考えていた礼が知己の胸に顔を押し付けたまま、だが確かに上下に動かした。  (……やった!)  あまりの嬉しさに知己は腕を下ろして礼をハグしようとした。だが、すかさず礼が 「Don't touch me!(触らないで)」  とピシャリと拒絶。  知己は慌てて、またもや腕を上げなおした。 (えー?! 自分から触る分だけは、いいのか!)
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加