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「また、いつか来てくれる? あの家に」
あの家は、礼が日本で一番長く住んでいる所だ。
礼にとっての故郷だ。
(嫌だと言われたら、どうしよう……)
一抹の不安が過る。
(嫌だと言われたら、俺は……実家に戻ろう。いや、戻るべきだ)
とは思うが、いまいちその決心はつかない。
(元々、あそこは礼ちゃんの家なんだから……)
気持ちの整理がつかないまま真下の礼を見下ろす。
「……」
しばらく考えていた礼が知己の胸に顔を押し付けたまま、だが確かに上下に動かした。
(……やった!)
あまりの嬉しさに知己は腕を下ろして礼をハグしようとした。だが、すかさず礼が
「Don't touch me!」
とピシャリと拒絶。
知己は慌てて、またもや腕を上げなおした。
(えー?! 自分から触る分だけは、いいのか!)
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