夏休みが来た 12

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 空港特有の優しいチャイムが鳴り、続いてアナウンスが流れる。 「あ、そろそろ行かなくちゃ」  礼が知己を解放し、何事もなかったかのように携帯を取り出した。  チケットのQRコードを表示させ、くるりと二人に背を向けた。 「礼ちゃん、元気でね!」  やっと腕を下ろした知己が縋るかのように声をかけた。 「サプライズでもいいから、また来てね!」  将之も続いた。 「もちろんよ」  礼が半身ねじって、二人に手を振る。 「将之お兄さん、知己お義兄(にい)さん。See you again!」  礼の姿がゲートの中に消えていく。  もう振り返ることもない。  遠くなっていく礼の姿を見送りながら、知己は 「……今、ちょっと『おにいさん』のニュアンス違わなかった?」  と将之に訊いた。  だが将之の方は 「気のせいでは? 僕には分かりませんでしたが」  微妙な違いの分からない男だった。           ―夏休みが来た・了―
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