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「言っとくけど、俺は、お前に裏切られた数々の恨み、忘れてないからな」
「裏切り?」
将之が目を丸くした。どうやら、本人は心当たりが一切ないらしい。
「もしかして、あれだけの掌返しを『忘れた』とでもいうのか」
「はあ。すみません。過去の嫌な思い出はできるだけ早く消去するタイプなんで」
「ふざけんな。協力すると言っておきながら、土壇場で礼ちゃんを庇いやがったぞ」
礼が将之の弁護に逃げて知己を避けるようになったり、肉親には手厳しい礼の性格を発動していなかったら。
知己は今、こんな気持ちで礼を見送ることはできなかっただろう。
「他にも地雷回避で、俺ばかり酷い目に遭わせやがって」
将之からいたずらしたのに、礼に目撃されて、知己ばかり加齢臭疑惑にもいきー扱い。忘れがたい思い出を刻んだ。
「いくら溺愛の妹と言っても、こうも何回も掌返されたんじゃ、お前のことヒトとしてどうなんだって疑いたくもなる」
とは言え、この男の所業の大半は「人としてどうなんだ?」な行動が多いが。
(これも中位家の血か……?)
基本、礼も将之も自分の気持ちが最優先。
悪く言えば、やりたい放題。
(溺愛の妹……。最優先……)
知己の胸の奥に黒いモヤモヤとした塊がある。
(そっか。それで、こんなに将之の言う通りにしたくないんだ)
知己は、やっとその正体に気付いた。
「確認させてもらう。俺は、お前の何だ?」
「は?」
突然の知己の質問。将之は意味が分からない。
(それとこの先輩のヤサグレ状態。何の関係があるのだろうか?)
将之はキョトンとしたまま、首を傾げた。
「礼ちゃんがお前の天使なら、俺はお前の何なんだ?」
「……え」
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