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「お前、また! そんな気障なことを……!」
慌てて引っ込めようとする知己の左手は、将之ががっしりと掴んで離さなかった。
「こういうのも、たまにはいいでしょ?」
知己の反応は想定内だったのだろう。将之はにやりと口角上げるだけの悪い笑顔を見せた。
そんな顔で微笑まれても
「よくない!」
としか言いようがない。
「それ、即答しますか?」
将之は呆れた。
知己がジタバタと暴れてみたものの、将之も意地になっていて握られた手は放してくれそうもなかった。
(それなら、こっちから)
と知己は正面から顔を近づけた。
「!」
将之は驚いて目を見開いたが、かまわずに右手を将之の頬に添え、わずかに角度を変えるとすかさず唇を重ねた。
知己の行動に驚いた将之が、珍しく固まっている。
「……仕返しだ。お前、変に固まるな」
気まずそうに知己が言うと
「絶対に……頭突きされると思いました」
固まったまま、唇だけ動かして将之が答えた。
「そんなことはしない」
「最近、先輩のDVが酷かったので」
「DV?!」
「僕が近付くと相撲の張り手の練習し始めたり、礼ちゃん送るときに蹴ったり」
「お前が良からぬことしか言わないからだろ?」
「……こういう仕返しなら、いつでも歓迎です」
喋りながら徐々にフリーズから解けた将之が、突然、知己の膝と脇の下に腕を差し込み、知己を抱え上げた。
「な、なにをする気だ!」
一気に目線が高くなり、知己は狼狽えた。
「もちろん、ナニをする気です。でも、ここじゃ、先輩がすぐ礼ちゃんの話をしそうなので、ベッドに連れて行こうかと」
「余計な気遣いだ!」
言われて反射で応えたが
「じゃあ、ここでしていいんですか?」
「う……」
それはやはり嫌だ。
「……ごめん。やっぱベッドに連れていけ」
知己は、しおしおと腕を将之の肩に回した。
「了解ー!」
結果として、知己からのベッドのお誘いをもらった。
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