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★過ぎ去った夏 2
「将之、ステイ!」
「無理です」
「ホーム!」
「ここです」
耳たぶ、唇、顎、首筋、鎖骨……将之はからかうように、叫ぶ知己をベロベロと舐めていた。
「うひゃぁ! この……、この駄犬めー!」
知己の罵りの言葉も虚しく、将之はそこで知己のシャツを万歳させる要領で一気に引き抜いた。
「……お久しぶりです」
「……人の胸、見ながら言うな」
まったく言う事を聞かない駄犬にコマンドを連発するだけしたが、やるだけ無駄だった。その反動で息が弾み、すっかり荒くなった呼吸に合わせて知己の胸も上下していた。
「期待してます? 勃ってますよ」
上下する胸にぷっくりと存在を主張する突起を、将之は無遠慮に眺めた。
将之がふざけて耳たぶや首筋を舐めていた。それに「ステイ!」だの「ホーム!」だの誤魔化すかのように叫んでいたが、知己が、それで感じないわけがない。
甘く噛まれたり舐められたりするたびに、そこから甘い疼きが生まれる。
(俺だって……!)
甘い疼きは、すべて知己の胸に押し寄せた。
疼きは泣きたくなるような感情に姿を変え、知己の胸をきゅうっと締め付けていた。
「そりゃ……俺だって一週間ぶりだし、あんなにされたら誰だって……、あっ」
知己にしてみれば「一週間ぶり」だと、自分だって我慢していたのだと将之に聞いてほしかった。
だが知己の言葉も半ばに、将之が我慢しきれずにそこを、はむっと口に含んだ。
「あ……、ん、ん……」
戸惑い気味に知己の手が上げられ、数秒所在なさげに宙を彷徨った。やがて将之を見つけたかのようにそっと肩に置かれた。
「ん……っ」
そこを口に含んだまま将之が形を確かめるかのようにゆっくりと舌で捏ねる。将之の触れた部分からはもれなく甘い疼きが生まれ、その度に知己が甘えたような声をかすかにもらした。
「……ぁ……っ」
一週間ぶりだから、なおさら声が出てしまう。
だけど、それが返って恥ずかしいらしく、引き結ばれた知己の口からは戸惑いがちな声が漏れるばかりだった。
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