★過ぎ去った夏 2

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 知己の猛るものから透明な液が糸を引き、それが腹を濡らした。 「も、無理……っ……」  眉間に皺を寄せて、知己は快楽に抗う。 「我慢しなくていいんですよ」  きゅうきゅうと締め付けてくる感触から、知己が絶頂間近なのは将之も感じられた。  それに必死に抗っている。 (また、一緒にイキたいって思っているんだろうな)  毎回、知己がこだわっているのだ。  どうも、自分ばかり先に達することに引け目を感じてしまうらしい。 (だけど……、すみません。先に良くなってしまう先輩を見たいんですよね)  苦し気な知己を解放したくて、促すように将之は、奥からその部分をゆっくりと押し上げた。  すると、数度、ビクビクと腰を揺らし、尚 「……ぐ……っ」  と唇さえ噛み締めて、知己は頭を振った。 「一回出しといた方が、楽でしょ?」 「ぅ……っ、ふ……、ぅ……、それが、嫌だっ……つってんのに……」  呼吸の合間に、文句が混じった。 (やっぱり)  将之の考えが確信に変わる。 (だけど、申し訳ないんですが頑固な先輩も可愛いです)  これは決して口にしてはいけない。  多分、雰囲気台無しで、ぶっ叩かれるから。  ギリギリの所をなんとか持ち堪えた知己から、将之は指を引き抜いた。  荒い息を吐きながら、知己が安心したような表情を浮かべる。  その顔を見て、 「……誰にでもしませんよ」  と将之が言った。 「?」  不意のことで意味が分からない。 (何の話だ?)  先ほどの行為で汗が吹き出していたが拭うこともままならない。白い靄がかかったような頭で、将之の言った意味を考えた。 「こんなこと、誰にでもしませんよって言ったんです」 (あ。……なんだ。聞いてたのか)  ―――――そりゃ……俺だって一週間ぶりだし、あんなにされたら誰だって……  甘噛みされたり舐められたりと色々されて反応している体を見られ、思わず知己が言った。言葉を遮るかのように早急に胸を啄まれたので、てっきり聞かれていないと思っていた。 「先輩だけですよ」  大きく割かれた膝裏にキスを落とされ、びくりと思わず体をこわばらせた。 「ん……っ」  返事のようなそうでないような、曖昧な声が知己から漏れた。
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