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指を抜かれたそこに、将之のものが宛がわれる。
「ンあ……、あぁぁっ……!」
知己と同じくらいに猛ったものは、指よりも太さも質量もあった。それが、知己の狭路を傷つけないようゆっくりと押し入ってくる。
「う……ぁ……、ぁ……っ」
何度経験して慣れたようでも、この圧迫感は否めない。だけど将之は、それを紛らわせるように膝裏や知己の顔や、そこかしこにキスの雨を降らせた。
(将之……)
そういえばこの男は、嫌になるほど欲望に忠実だったが、必ず知己への労りも持ち合わせていた。
「先輩……、知己先輩……好きですよ」
ご丁寧に体中へのキスの合間に、告白まで付いてきた。
「ん……っ、あ、ぁ……っ、……!」
そうでなくとも最中は、思考がまとまらないのに。
すべてを収めると、緩やかだった動きがにわかに激しいものへと転じた。
そうなると、知己は激流に翻弄されるような感覚に陥る。
(……も、いいや)
キスと告白と行為に翻弄され、
(今だけは誤魔化されてやる)
半ば捨て鉢な気持ちと共に、将之の首に腕を絡めた。
将之の礼への態度も、それを思い知った後の奇妙な怒りも悔しさも虚しさも、今は色々考えるのが面倒だ。
知己の思考という思考が散り散りに砕けてなくなっていくようだ。
(言っとくが……俺だけが、お前の天使なんだからなっ!)
霧散した思いの中で、唯一、そんな欲だけが知己の中に残った。
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