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今回も心配こじらせて面倒になりそうだから将之には秘密。だけど、父との再会の報告はしたい。だから、知己に連絡……、そんなとこだろうと予測した。
「……」
「礼ちゃんは、なんと?」
「……何でもない」
「は?」
「何でもないとか、ないでしょ? 何故隠すんです?」
「いや、本当になんでもないから」
将之にこんな言い方したら、それは「携帯を奪ってください」と言っているようなもんだ。
だが、知己は誤魔化すのがすこぶる下手だった。
「見せてください」
案の定、携帯を取り上げられた。
「やめろ! 見るな!」
とは言え、そうでなくても身長差があるのに、腰のふんばり効かない知己に勝ち目は0.0001%もない。
「どれどれ」
将之がいつかのお返しに、知己を押さえつけたまま携帯の画面を読んだ。
『まだ、羽田のラウンジに居ます。
父は用件だけ済ますとさっさと帰りました。
後、5年、学費は出してくれるそうです』
「あ、良かった」
素直に喜ぶ将之だが、知己は
(問題は、その後だ)
と将之の読み上げるのを複雑な気持ちで聞いていた。
『ところで、ちょっと聞きたいことがあります。
確か知己お兄さんは、博物館で会った綺麗な女性のことを好きでしたよね?
だのに将之お兄さんと付き合っているんですか?
そこんとこハッキリさせてください』
「ほほう……。これは……」
自分に来なかった理由に納得し、将之は真っ黒い笑顔を見せた。
携帯を指先でプラプラと摘まんで
「僕もぜひ聞きたいな。
これには、なんて返信するんです?」
ニヤニヤと訊いてきた。
「そうだな……」
知己は少し考えて
「卿子さんは俺の天使だが、将之は俺の宝物だ……と返信しよう」
「え? ずるいなー、それ。僕のパクリじゃないですか」
「お前のごまかしと一緒だ」
「僕は誤魔化してないんですよ? 本気で言ったのに。礼ちゃんは妹で、先輩は……ねえ、聞いてます?」
将之が何かごちゃごちゃ言っているが、聞かないふりして礼に返信を打っていた。
『今度、礼ちゃんが遊びに来た時に詳しく話すよ』
と。
―過ぎ去った夏・了―
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