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「卿……坪根先生? それに須々木? そんな所で何を……?」
不意に非常口のドアが開いた。
先ほどまでどこにいたのやら。今頃理科室に戻ってきた知己が、理科室の廊下の先、棟の最奥の非常口の方から人の話声が聞こえ、不思議に思ってドアを開けた。
「平野先生っ……!」
振り向いた卿子が涙声で救いを求めていた。しかも服のあちこちが汚れていて、とてもじゃないが尋常ではない様子を物語っている。
「……!」
驚く知己は、まったく悪びれずに睨み付ける須々木俊也と非常階段二階に身を乗り出してなにげなく携帯を構えていた吹山章を交互に見た。
「……お前ら、何をやってる」
知己の静かに、だが確実に怒気を孕んだ声。
だが、俊也と章は臆する様子はなかった。
「……もう、俊ちゃん。声おっきいんだから」
凄んで大声出した俊也を責める章に
「吹山、こっちに下りてこい!」
知己は毅然と対応した。
ゴネても無駄と判断した章が、
「はあ? なんすかー!」
わざと大きな声を出しながら不貞腐れた演技を見せて下りてくる。
「いいから、来い。こっちで話を聞く」
場所は非常口脇。
ここじゃなんだからと、知己は場所を建物内理科室に移した。
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