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文化祭バトル勃発 1
10月。激動の夏休みが明けて、二学期になった。
普通、知己の夏休みはあまり激動ではないのだが、今年に限っては強制補講に礼の来日。かなりハードモードだった。
二学期になってからというもの、章と俊也にもれなく敦が加わり、当たり前のように三人で放課後の理科室で喋る。
実験用机を挟んで、敦と章、向かいに俊也が座っている日常化してきた光景を見ながら、知己は
(見えない所で悪だくみするよりは、いい)
と受け入れていた。
「文化祭のクラスの出し物、何する?」
大きな目をクリクリさせて、章が嬉しそうに話しかけた。
(章は、こういうお祭りが好きそうだな……)
知己は三人に背を向けて、試験管の数を数えながらなんとなく聞こえてくる会話に耳を澄ませた。
「面白いこと、したいよな」
俊也も身を乗り出している。敦は
「正直、俺は興味ないけどな」
と頬杖ついて答えた。
「先生は、何したい?」
不意に章から話を振られた。
「俺は、お前らの話に混ざらねえぞ」
「どうして?」
「そういうのは生徒主体でするもんだからだ」
「そんなもん?」
俊也が訊く。
「そんなもんだ。ところで去年は何したんだ?」
「知らん」
敦が即答した。
「知らん?」
「企画から制作に当日、もれなく敦ちゃんは休んでたからね」
敦の代わりに、章が両手を合わせて頬に当て首を傾げる「お休み」ポーズで答えた。
「ちなみに、去年はフランクフルト屋さんだよ」
「おう。あれな。ホットプレートの上に置いて温めるだけで楽だった。俺が提案したんだぜ」
俊也が誇らしげに教えてきた。
だが、その向かいで章が
「俊ちゃんが、フランクフルト咥える女子見たさに提案したら満場一致で採用されたんだけど……ふっふふふ……」
説明の途中で吹き出した。
「あはは。あのね、何せ、文化祭だろうがなんだろうがここに外部から来る女子なんて居ないから。来るのは、むくつけき男だらけ。俊ちゃんは変な妄想して嘔吐。トイレに籠りっきりだったんだよー。あははははは」
(最悪な文化祭だったんだな)
敦が
「それのどこがそんなに面白いんだ?」
と珍しく知己が思っていることと同じことをコメントした。
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