文化祭バトル勃発 1

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「逃げるのか?」 「不参加だ」 「戦わずして逃げるとは、さすが教師だな。卑怯者め」 「卑怯者で結構」 「景品は章だと言っても?」 「謹んで進呈する」 「先生! そこは僕の為に戦ってよ!」  章がすかさずツッコんだ。  敦は、ため息を一つ吐き 「はー。やれやれ。欲深い教師だな。  じゃあ、負けた方が勝った方の言う事を何でも一つきく……なーんてのはどうだ? 俺はそれでも構わないぜ」  と言ったが、知己は 「だから、俺が構うって言っているだろ? してほしいことなんて何にもないし」  と全力で断った。  微妙な会話のズレを気にせずに、敦が 「は、はーん。分かったぞ……」  と、言った。 (絶対に、敦は分かってないんだろうな)  遠い目になり、今度は知己からため息がもれた。 「俺に負けるのが、怖いんだ」 (やっぱりな……)  今日は嫌になるほど予感が良く当たる日だと知己は思った。 「だから話を聞け。俺は『負けでいい』と言っているんだ」 「それが分からん。なんで負けでいいんだ?」 「本当にお前ら、人の話を聞けよ」 「よし。聞いてやろうじゃねえか」  どうして敦はこうまで上から目線なのか。  それは分からないが、とりあえず知己は自分の考えを主張してみようと試みた。 「あのな、文化祭というのは生徒主体の活動だろ? そこに教師がノコノコ参加するってどうなんだ? おかしいだろ? だから、俺を巻き込むな」  懸命な知己の説明も 「うるさいな」  と一蹴された。 「文化祭は学校行事だろ? 学校の為に教師も一肌脱げ」 (なんか、いいように解釈してないか?)  学校行事ってそんなものだったか? と知己は思った。 「僭越ながら、先生のお耳に入れたいことが……」  突然、章がまっすぐに右手を上げた。 「……?」 (やだな。絶対に何か悪いこと考えている顔だ)  知己は怯んだ。  今日の嫌な予感的中率を考えたら、それもやむを得ない。 「ちょっとこちらへ……。まあまあ、こちらへ……」  何故か章は、俊也と敦にウィンクをすると、怯みまくった知己を強引に連れて、理科準備室に消えて行った。 「章のあの態度……、先生を引っ張り出す作戦があるんかな?」  あまりの章の勢いに俊也が呆然としていると 「さすがは章。なんかいい考えがあるのだと思うぞ」  敦は絶大の信頼の眼で、理科準備室に消えていく二人の姿を見送った。
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