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その章の作戦が功を奏したのだろう。
次に知己が準備室から出てきたときの第一声は、
「敦! 参加させてもらおう!」
だった。
「……マジか?」
あれほど頑なに不参加を言い張っていた知己の変わりよう。
俊也は驚き、敦は喜んだ。
「章、でかした! 一体、担任に何を吹き込んだ?」
「敦、お前『授業の三分の一は休んでもいい』と懲りずに、週に1日は休んでいるんだってな?」
章の代わりに知己が答えた。
「な!?」
「週休三日、ストレス軽減とか言って、勝手に一人働き方改革しているんだと?」
知己の片手には出席簿が握られている。
(やばい。『週休三日制勝手に導入』がバレた)
夏休み以降、敦の顔をちょくちょく見るようになった。
それで「今日も学校に来ている」と安心し、「頑張っているな」と思っていたくらいだ。
まさか知己の授業のある日以外は定期的に休んでいるとは知らず、先ほど出席簿を確認して、驚愕の事実を知ったのだ。
「学校は週5日もあるわけで1日休んでも残りを出れば5分の4も出ることになるから、出席日数は足りる計算なんだって?」
「あう……」
思わず、変な声で肯定してしまった。
「お前はまたそんなことして、本当に体調崩して休まなくちゃならない時はどうすんだ!」
知己に怒鳴り飛ばされて、思わず肩をすくめた敦は
「章! 何故、バラした!?」
情報源の章に抗議するかのように問いただした。
「だって、敦ちゃんは、先生をミスコンに引っ張り出したかったんでしょ?」
「そうだけどっ」
「俺が勝った場合、副賞は敦!」
知己が敦を指さした。
「きゃあ! 敦ちゃん良かったねぇ!」
章が頬染めて喜んだ。敦も真っ赤になって
「な、何?!」
戸惑いの表情を浮かべた。
「敦、お前の文化祭以降の皆勤を要求する」
「うぎゃー! 何、それ!? 横暴だ! 俺、体、弱いのに?!」
とはいえ、計画的に週に1度休みを増やすくらいだ。どこまで本当に具合が悪いのか、怪しいものだ。
「病気・その他やむをえない理由で欠席の場合のみ認めてやる。その場合、病院の領収書で病欠にする。また家庭の事情の場合も同様に親・もしくは同等の者に一筆書いてもらうことを条件に休ませてやる」
「ぎゃー! まさかのこいつからの上から目線語り? 許せん! 絶対に俺が勝つ!」
敦も門脇と同様、教師の高圧的な物言いにアレルギーを持つようだ。
こうして、梅木敦と平野知己の女装ミスコン出場が決まった。
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