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文化祭バトル勃発 2
その日、職員室に入るなり知己は坪根卿子につかまった。
「平野先生、聞きましたよ。『第一回八旗ミスコン』に出場なさるおつもりだとか」
「……誰から聞いたんです?」
「敦君」
「……」
おそらく、知己が気が変わらぬよう吹聴してまわっているのだろう。
(あいつ……)
苦々しく思っていると、何か勘違いしたらしく卿子が自分の胸をどんと力強く叩いた。
「安心なさって。私、全面協力しますので」
「は?」
「あの子達にヤられっぱなしだなんて、癪じゃないですか」
「? やられっぱなしとか、そんなんじゃないんですが……」
卿子の目には、知己とあの男子高校生達はどんな風に映っているのだろう。
知己は甚だ不安になった。
「え? そうなんですか? 私はてっきり、敦君たちに一矢報いようと思ってミスコンエントリーをしたのだと思ってました」
(ミスコンで報いる一矢って、どんな矢だ?)
そんなことで報いてもあまり喜ばしくないと思うのだが、卿子はやる気満々だ。
それで
「でも、きょ……坪根先生の協力は嬉しいです」
と知己が言うと
「わあ、本当ですか?」
卿子が嬉しそうに微笑んだ。
「本当です」
「じゃ、メイク・衣装・補整はお任せくださいね!」
「補整?」
聞きなれぬ言葉だ。
「せっかくですもの。平野先生をナイスバディにしちゃいましょ」
知己がいまだに意味が分からずにいると
「昭和でいう所の、『ボン、きゅっ、ボン』でしょ?」
二人の会話を聞きつけたクロードが入ってきた。
「それそれ! 大人の魅力、見せつけちゃいましょ」
何かはよく分からないが、卿子が楽しそうならいいか……と知己は思った。
「Ms.坪根……。それを言うということは、ある種の疑惑が生じますね」
クロードが意地悪く言うと
「あら。失礼ね。私は自前ですよ」
ベッと卿子が茶目っ気で舌を出した。
(……やべ。可愛い……)
何故か舌を出されたクロードを羨ましく思ってしまう。
(俺にも、してくれないかな)
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