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「須々木も、吹山も……、一体何なんだ? この事態を説明しろ」
「あ、贔屓! こっちの綺麗なお姉さんには聞かないんっすか?」
「公平に聞くに決まってるだろ。だけど、お前たちの話が先だ。坪根先生には後で聞く」
涙目の卿子を見れば、おおよそのことは察しが付くが決めつけで生徒指導はできない。
(教師が真実を掴むことが大事)
だが真実を話させるには順番も重要だ。
嘘をつく必要がない卿子に先に真実を喋らせれば、それをごまかしたい俊也達は事実を認めたがらずに黙り込み、うまく話を引き出せないかもしれない。本人たちに言わせなければ「それは先生たちの勝手な憶測だ」「決めつけだ」と言われ、真実をうやむやにされてしまう可能性がある。それで、俊也達に先に話させ、後で卿子の話を聞いて、俊也たちの話に嘘が潜んでいないかを検証した方が、より確実に真実が掴める。
知己に促され、まずは俊也が話し始めた。
「俺たちはここでただ喋っていただけなのに、このお姉さんがやってきて俺達見て速攻逃げ出したんす。めっちゃ感じ悪くって。それで、なんか勘違いしてるんじゃねえかって思って、慌てて捕まえたら、今度は頭突きをくらわされたんっすよ。暴力反対ー」
俊也が言い終わるや、卿子がすかさず「違います!」と否定した。すると今度は
「違いませーん!」
章がかぶせてきた。
だが、負けずに卿子が説明を続けた。
「その、頭突きっていうのは……この人に腕を引かれて体が密着したんです。それで離れようとしたら頭が当たって……!」
「言い訳ー」と俊也が口を挟めば、
「言い訳ー」と章も口を挟んだ。
卿子にまともにしゃべらせようとしない。
「違います、いい訳なんかじゃないです!」
二人の態度に卿子が怒りを覚え、早口でまくし立てた。
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