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文化祭バトル勃発 3
「あれ? 俊ちゃんは?」
放課後、2-3教室で文化祭の準備をしていた章が、敦に尋ねた。
「居ないな」
興味なさそうに、それでもぐるりと一通り見渡して敦が答える。
「居ないな……じゃないでしょ? 俊ちゃん、投票の仕事を担当するって言ってたのに、準備どうする気だろ。
あ、まさか……!」
「なんだ?」
「今日も理科室に行っちゃった……とか?」
「まさか。担任が、あれだけ『今週一週間、理科室立ち入り禁止』ってHRで言ったのに? いくら俊也の記憶力がニワトリ並みだからって、それはないだろ?」
敦の他に3名で、角材で作った木枠にうすいベニヤ板を打ち付けて、エントリーポスターを貼る掲示板を作っていた。
釘打ちなど普段滅多にさせてもらえない作業なものだから、敦は大喜びで取り組んでいた。
「記憶ないっていうか……俊ちゃんの場合、そもそも先生の話を聞いてないからね」
「……確かに」
「先生に怒られちゃわないかな? 止めに行こうかな?」
章が、さも心配してます風の演技を見せたが
「お前も理科室に行きたいだけだろ?」
敦は見破っていた。
「面白そうだから、行かせとけば? あわよくば担任が何を企んでいるか、分かったら儲けだし」
リズミカルに金槌を振るう。何度かやって要領を得たようで、「よし、綺麗に打てた」とまっすぐ打てたことを自慢げに章に見せた。
「敦ちゃん、必死だね……」
「俺の週休3日を邪魔する奴は、何人たりとも許さん」
という敦の表情は、いろんな意味で生き生きとしていた。
(去年のことがあってから、学校は休みがちで来てもすっごく暗かったのに、ずいぶん明るくなったなぁ)
人間、張り合いがあるのはイイコトなんだな……と章は思い、おそらく理科室に向かった俊也の無事の帰還を祈ることにした。
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