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「これもちょっと着てみませんか?」
クロードは、知己が見たこともない女性用下着を取り出した。
「な?!」
生々しい下着に知己が真っ赤になる。
ブラの下の部分に伸縮性に富む布地が長くついていて、下腹部まで覆える作りだ。バストとお腹あたりにワイヤーが入っていて、着たら自然と美しいプロポーションが手に入る。
卿子の方は平然として
「わあ、本格的。これも借りてきたんですか?」
とクロードに尋ねた。
(とことんMs.坪根は、知己を異性として見れないんだな。知己、お気の毒……)
卿子の反応に知己を憐れみつつ、クロードは頷いた。
「な、何なんですか? これは……」
怯えたように知己が卿子に訊く。
「ボディシェーパーですよ。体を絞めて腰のくびれを作ります」
「絞め……っ?」
その言葉を聞き、知己にはその下着が、まるでアイアンメイデンか何かの拷問器具に見えてきた。
「な……なんというか……俺は男だから、なんぼ絞めても腰にくびれなんか作れないと思うんですが……」
なんとかやんわりと断りを入れたい知己だったが
「そうですかぁ。意外とこれ、優れものですよ」
と卿子は食い下がった。
もはや言葉もなく、知己はぶんぶんと音が出そうなほど首を横に振った。
「体型が分かりにくい服ではあるけど、せっかくの女装なんだから、少しはくびれもあった方がいいと思うんで、私は着用を勧めます。これで勝利は目前」
妙に自信たっぷりに卿子が言う。
「いや、本当に無理。こんなの着れません。そもそもどうやって着るかも分かりませんし」
知己は一生懸命断る理由を探したが
「お教えますよ。私もクロード先生も、着るのを手伝います」
卿子はあっさりと言った。
持ってきたくらいだから、多分、クロードも着方は分かると思ってのことだろう。
(これを……着る……?)
理科準備室で着用する姿を想像してみた。
卿子に手伝ってもらっても、クロードに手伝ってもらっても、地獄絵図しか思い浮かばない。
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